開催報告

2022年度 第5回 都医学研都民講座(2022年10月7日開催)
「健康的な生活リズムを支える体内時計を知ろう」


体内時計プロジェクトリーダー吉種 光

10月7日(金曜日)、「健康的な生活リズムを支える体内時計を知ろう」と題して、2022年度第5回都医学研都民講座をハイブリッド方式で開催しました。今回は、東京大学名誉教授の深田吉孝先生を講師にお迎えしました。吉種は東京大学に在籍時(学部生の頃から都医学研で独立するまでの間ずっと)、深田吉孝教授の研究室に在籍し、一貫して概日時計の分子メカニズムの研究に従事してきました。この度は自分の恩師をお招きして都民講座を開講いたしました。

多くの生物は、地球上の一日周期の環境変化に適応し、概日時計を獲得しました。この概日時計に支配される概ね一日周期の生理現象は概日リズムと呼ばれています。この概日リズムの周期には個人差があり、正確に24時間ぴったりではありません。環境の24時間周期に同調できる時刻合わせ機構により、概日時計が毎日リセットされることで24時間周期を保っています。ヒトの多くの生理現象には概日リズムが見られ、例えば、体温・血圧・脈拍数・肺活量は、昼から夕方にかけて最高のレベルに達します。同様に疾患の発症のタイミングや症状にも概日リズムが見られ、例えば、高血圧症は夕方に血圧が上昇することで発症することが多いことが知られています。また最近のマウスを使った実験では、活動期である夜間にのみ時間を制限して食餌を与えたグループにおいて、同じカロリーの食餌を摂取していても体重の増加率が低下することが報告されています。人に置き換えると夜中の食事は太る、という経験則の証明でもあります。さらにその効果はダイエットにとどまらず、マウスの食餌のタイミングをコントロールするだけで、寿命が延びることが知られています。さらに、概日時計がきちんと働くためには、朝日を浴びることが大事ですが、朝ごはんを食べることで脳の時計中枢と末梢組織にある時計とが同調し、身体の中での時差ぼけ状態を防いで健康的な生活を送ることにつながります。このように最先端の知識も取り入れながら、都民に概日時計の仕組みとそれを理解して生活することによる健康長寿への効果についてわかりやすくご紹介されました。

講演後のアンケートでは、「今までいろいろな本や情報源で、おおまかなお話は伺ったことがありましたが、今日は、研究に基づいた詳細な説明を伺うことができ、結果内容だけではなく、そのプロセスをよく理解できたため、今まで以上に体の仕組みを通して、睡眠や食事の大切さを理解することができました。」といった御意見を多く頂きました。


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