開催報告

2022年度 第6回 都医学研都民講座(2022年11月2日開催)
「認知症のBPSDについて考える」


認知症プロジェクトリーダー長谷川 成人

11月2日(水曜日)、「認知症のBPSDについて考える」と題して、第6回都医学研都民講座をオンライン方式で開催しました。今回は、東京慈恵会医科大学精神医学講座准教授の品川俊一郎先生を講師にお迎えしました。

認知症は、脳の障害によって認知機能が持続的に低下し、社会生活を行うことが困難になっている状態です。認知症には、記憶障害、視空間憶障害、失語等の認知機能障害以外にも、落ち着かなくなる、攻撃的になる、落ち込む、意欲がなくなる、幻覚がみえるといった行動症状・心理症状が出現します。これらの症状はかつて「問題行動」や「行動障害」と呼ばれていましたが、1990 年代に入り、中核的な認知機能障害である中核症状と、それに伴って出現する行動・心理症状、すなわち周辺症状という捉え方がなされ、これに伴い、周辺症状についてはBPSD という呼び方が提唱され、2000年代から普及してきたそうです。BPSDの出現には、生物・心理・社会の様々な側面が影響しており、心理・社会的な要因としては、例えば、アルツハイマー病の場合、もの忘れが目立ってくることで、周りの人から注意・心配を受けることが多くなり、本人は周りの人に依存することに戸惑いを覚え、「全く分からない」のではなく、「わからないことはわかる」のが悔しくなり、その結果、不安になり、取り繕い、混乱を隠そうとし、怒りっぽくなることが挙げられるそうです。一方、生物的な要因としては、例えば、前頭側頭型認知症の場合、意欲、思考や感情の表現、判断を司る前頭葉や、記憶・言語を司る側頭葉の機能が低下することで、自発性の低下、同じ行動を繰り返す常同行動や公共の場で大声で笑ってしまうような脱抑制が現れると、お話しいただきました。

講演後のアンケートでは、「初めての都民講座に参加させていただきましたが、認知症のBPSDについてわかりやすい講義でとても勉強になりました。」「広範にわたる認知症に関する基礎知識と、BPSDの概要を症例も含めてご紹介いただいて大変勉強になりました。」といった御意見を多く頂きました。


認知症プロジェクト >>