開催報告

第7回 都医学研都民講座(2024年1月20開催)
がん遺伝子パネル検査の最新の動向


がん免疫プロジェクトリーダー 丹野 秀崇

池上政周 先生
池上政周 先生

1月20日に都立駒込病院・骨軟部腫瘍科・医長の池上 政周(いけがみ まさちか)先生をお招きし、都民講座「がん遺伝子パネル検査の最新の動向」を開催しました。まず私から、がんは遺伝子の変異によって発生することをご説明しました。池上先生の講演ではがん治療における遺伝子検査の重要性や課題についてお話しされました。例えば、肺がんの遺伝子変異や、その変異に良く効く薬剤は開発が進んでおり、治療前に患者さんのがんが持つ遺伝子変異を調べることによって適切な治療薬を選択出来ます。これをコンパニオン診断と言います。コンパニオン診断では少数の遺伝子について検査をするのみでしたが、2019 年からはがんが持つ多数の遺伝子変異を網羅的に調べて、適切な治療薬を探すがん遺伝子パネル検査が始まっています。がんの遺伝子変異を広範に調べることから有効に思えますが、現時点ではまだまだ課題が多いそうです。例えば、パネル検査で遺伝子変異が見つかったとしても、それに対応する薬剤がまだ存在しなかったり、その変異のがん悪性度における寄与が分からなかったりします。そこで、パネル検査の有効性を向上させるための様々な取り組みがなされています。例えば、がんゲノム情報管理センターは患者さんの診療情報・がん遺伝子情報を集積している機関であり、患者さんのプライバシーを保護しつつ、これらの情報を研究機関や製薬企業に提供することで、日本における新規がん治療薬の開発に大きく貢献していることをご紹介いただきました。また、池上先生らのグループでは様々な遺伝子変異と治療薬感受性の対応関係を高速に調べる手法を開発されており、この手法により治療薬が有効な遺伝子変異を見い出すことが出来ることをご紹介いただきました。その他にも様々な取り組みをご紹介いただき、医師・研究者らががんを撲滅するために日々努力していることが伝わってきました。

講演終了後は「最新の研究成果をわかりやすく発表していただき、とても興味深く、理解できた。ありがとうございます。」等の御意見をいただきました。