開催報告

第8回 都医学研都民講座(2024年2月2開催)
歯科医療が未来を変える~今から始めるオーラルフレイル対策~


難病ケア看護ユニット 中山 優季・松田 千春

戸原玄 先生
戸原 玄 先生

第8回都民講座では、東京医科歯科大学教授の戸原玄(とはら はるか)先生を講師にお迎えし、オーラルフレイル対策について、ご講演いただきました。

高齢化の進展に伴い、肺炎で亡くなる方が増えています。高齢者が肺炎になるきっかけとして多いのは、筋力が弱り飲み込む力が衰え、食べ物が気管に入ってしまうことです。飲み込む力が弱くなっている場合は、ひどく痩せている、目が覚めていない、声が出にくい、痰が異常に多い、口が非常に汚い、口が異常に乾燥している、呼吸が安定していない、首の部分の筋肉が硬い、ひどい猫背である、ことが多いです。一見、口腔と結びつかない点からも、その危険は潜んでおり、食事時のテーブルが高すぎないか、足底が安定しているか、椅子からずり下がっていないかなど、姿勢の大切さについて、ご講演いただきました。また、口の中を汚いままにしておいて細菌が繁殖すると、虫歯や歯周病になるだけでなく、歯肉の近くには血管が通っているため細菌が血管に入り込んで心臓に届いた結果、細菌性心内膜炎を起こすことになります。血管の場合には動脈硬化、肺の場合には誤嚥性肺炎を引き起こします。細菌を増やさないためには、歯磨き、検診、治療が必要です。まさに、「口は、生きるの一丁目一番地」であることを教えて頂きました。

さらに、特別ゲストとして、戸原先生チームの歯科往診を受けている筋萎縮性側索硬化症療養者である岡部宏生(おかべ ひろき)さんにもコメントを頂き、舌を噛まないようにするためのマウスピースの工夫など、口から食べることがなくても、口腔内環境を整えることの大切さをご紹介頂きました。

講演後のアンケートでは、「勤務先でも十分取り入れられる内容なので、他のスタッフにも情報共有が出来ればと思います。」「大変参考になりました。歯科衛生的見解にとどまらず、姿勢や筋力に着目されていたのは新鮮でした。」といった感想をいただき、ご講演後には、先生への質問の列が途切れることなく続きました。