開催報告

2024年度 第48回 サイエンスカフェ in 上北沢(2025年2月15日 開催)
健康の謎を解く。クイズと実験で科学の世界をのぞいてみよう!


幹細胞プロジェクトリーダー原 孝彦

通算 48 回目のサイエンスカフェを、首都圏在住の30 名の小中学生と保護者の皆様を医学研講堂にお迎えして開催しました(図1)。今回は、細胞・DNA・がん・健康維持に関係す2択あるいは3択のクイズを全部で15 問出題し、答えを予想してもらいながら進めていきました。まず初めにヒトのがん細胞株の培養を例にして、何時間で2倍になるか、細胞一個に含まれている DNA の長さを予想してもらいました。大半が小学校低学年ゆえ難問だったと思いますが、保護者の知恵を拝借しながら、生徒さんたちは楽しそうに◯をつけていました。次に、私たちの体では一日当り何個のがん細胞が発生しているか、そしてがん細胞では細胞当たりの DNA 量や染色体数が増えているかどうかを考えてもらいました。がんは怖い病気ですが、私たちの体には病原体やがん細胞を見つけて退治してくれる強力な免疫細胞部隊が備わっていますので、心配は要りません。安心してもらうために、免疫の仕組みを簡潔に説明しました。その上で、HeLa 細胞という有名なヒトがん細胞株を用いて、細胞から DNA を抽出する様子を生徒さんの前で実演しました。この実習パートでは、4名のリサーチアシスタントさんたちが同時進行で実験をおこなって下さいました。生きているがん細胞を顕微鏡下で観察し、取り出した DNA にオレンジ色や緑色の蛍光色素を加えて光らせましたので、医学の実験を身近に感じてもらえたのではないかと思います。

後半は、マウス受精卵の卵割の様子を撮影した動画を視てもらい、胚性幹細胞や iPS 細胞に関する研究の歴史を解説しました。iPS の発明は 18 年前の話ですが、生命科学と医学の歴史上、最も重要な出来事のひとつであったと思います。続いて、年をとると活性酸素によって DNA やタンパク質が傷みやすくなること、それを防ぐにはレモン、緑茶、ピンクサーモンといった抗酸化物質を多く含む食品を摂るのが良い(図2)ということをお話ししました。さらに、私たちの脳では刺激あふれる環境で暮らせばより多くの神経細胞が誕生すること、人間の限界寿命が 120 歳であることの根拠、そして健康長寿の8条件をわかりやすく解説して講義を終了しました。最後にクイズの正解数を集計したところ、3人の生徒さんが 15 問中 12 問の正解を達成しましたので、優秀賞として記念品を贈呈しました。生徒さん・保護者・スタッフが一体となって楽しめた2時間だったのではないかと思います。

図1
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図2
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