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演者 | 冨樫 庸介 岡山大学学術研究院 医歯薬学域 腫瘍微小環境学分野 教授 |
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会場 | 講堂 |
日時 | 2023年2月16日(木曜日)16:00~ |
世話人 | 丹野 秀崇 がん免疫プロジェクトリーダー |
参加自由 | 詳細は下記問合せ先まで |
お問い合わせ |
研究推進課 普及広報係 電話 03-5316-3109 |
がん免疫療法の効果が証明されたが、効果は不十分で効果予測バイオマーカーや、より効果の高い治療が求められている。そこで、抗腫瘍免疫応答の本質である腫瘍微小環境を1細胞レベルで解析することで様々な知見を見出してきた(Togashi Y, et al. Nat Immunol 2020; Immunity 2020)。さらに詳細な解析のために、シングルセルシークエンスにも取り組んでいる。特にT細胞受容体(TCR)も同時に解析し、得られたTCR配列と同一患者由来の腫瘍細胞株を反応させ、PD-1やCD39といった所謂疲弊関連分子を高発現する疲弊T細胞クローンこそが真に抗腫瘍免疫応答に重要な腫瘍を攻撃しているT細胞クローンであることを明らかにした。一方で腫瘍微小環境にはクローンとしてエクスパンドしていても腫瘍細胞を攻撃していない非特異的なものも含まれていた。また、腫瘍を攻撃している疲弊T細胞クローンは抗PD-1抗体治療前後でダイナミックに変化しており、特に治療前には存在していなかった新規のクローンが新たに浸潤してきていた(Togashi Y, et al. Cell Rep 2022)。さらにCD4陽性T細胞の中にも細胞障害性を有するクローンがあり、その表現型を明らかにし、CD4陽性T細胞疲弊を再定義している(Togashi Y, et al. Immunity under review)。また、同じ疲弊T細胞クローンの中にも増殖能を有するものもあれば、増殖能が低いものもあり、その違いにミトコンドリア代謝が関連すること見出している(Togashi Y, et al. Nature under review)。これらは将来的な新たなバイオマーカーや治療標的になる可能性があると考えている。