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演者 | 難波 隆志 ヘルシンキ大学 Senior Researcher |
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会場 | オンライン(Zoom) |
日時 | 2022年7月29日(金曜日)11:00~ |
世話人 | 丸山 千秋 脳神経回路形成プロジェクトリーダー |
参加自由 | 詳細は下記問合せ先まで |
お問い合わせ |
研究推進課 普及広報係 電話 03-5316-3109 |
ヒト脳、特に大脳新皮質はその進化の過程でサイズ・形状共に大きな変化を遂げてきました。大脳新皮質の増大に寄与したメカニズムの一つとして、神経幹細胞の高い増殖能が挙げられます。我々はヒト神経幹細胞が高い増殖能を獲得するのに必要なメカニズムとして、ガン細胞などで亢進しているグルタミン代謝を同定しました。さらに、ヒト特異的遺伝子の翻訳産物がミトコンドリアに局在し、神経幹細胞でのグルタミン代謝を促進していることを発見しました。これらの結果は神経幹細胞の細胞内代謝適応がヒト大脳新皮質の進化のカギの一つとなった可能性を示唆しています。
それでは、このようなヒト脳の進化・発生研究は医学研究の発展にどのように貢献できるのでしょうか?一つの方向として、脳形成障害の病因解明が挙げられます。例えば、小頭症の病因としては一般的に神経幹細胞の細胞分裂異常が知られています。しかしながら、小頭症の関連分子の一つであるMCPH1がミトコンドリアにも局在し、神経幹細胞の細胞内代謝を制御していることが近年わかってきました。このように、神経幹細胞の細胞内代謝を理解することが脳形成障害の病因解明に役立つ可能性が示唆されてきています。本講演では演者らによる最新の結果を紹介しつつ、ヒト脳進化・発生研究の次なる方向性に関して議論したいと思います。