依存性物質プロジェクトリーダー池田 和隆
「2025 年度第 1 回都医学研都民講座」は、若年層のメンタルヘルス向上を目指し、精神医療の第一線で活躍する水野雅文院長を講師に迎え、開催しました。近年、若年層における精神疾患の罹患率と自殺率の増加が社会的な課題となっており、早期発見と適切な治療の重要性が高まっています。
本講座で私は、依存症の多様な対象(インターネット、ギャンブル、買い物などの行動、アルコール、薬物、市販薬などの物質)や、その問題の深刻度(軽微なものから犯罪レベルまで)について解説しました。
また、依存症が生物の根源的な性質である「好む」という感情と深く関わっている点を説明しました。さらに、遺伝的要因が依存症リスクに影響を与えることから、遺伝子検査が早期発見に貢献する可能性について言及し、ゲノム解析の進歩により、個人の遺伝子タイプに基づいたテーラーメイド医療の実現が近づいている現状を紹介しました。
続いて水野先生からは、日本のメンタルヘルスの現状について、詳細なデータに基づいた解説がありました。驚くべきことに、現在、精神科の患者さんは全国で 600 万人を超え、特に 10 代の若年層で心の不調を訴える方が増えています。水野先生は、若年層の精神疾患は学業や社会生活に大きな影響を及ぼすこと、そして自殺という悲しい結果につながるケースがあることを指摘されました。また、コロナ禍における女性の自殺増加など、社会情勢が心の健康に与える影響についても深く掘り下げられ、早期発見・早期治療の重要性を強く訴えられました。
講演後のアンケート結果では、「自分が若いころは精神疾患は特別な病気のように考えていましたが、同時に家族性があるとも感じていました。情報が発達し、個別化が進んでいる現在、誰でも発症リスクがあるのではと考えるようになっていますが、中でも高校生~大学生の女子で希死願望が強いというデータに不安を覚えました。親が扱うには難しい年代の子供達であること含め教育の場での協力を切に願います。」などの感想が多数寄せられ、皆様からの関心の高さが伺えました。今回の講演を通じて、心の病に対する理解が深まることを期待しています。

