HOME刊行物 > Oct 2018 No.031

開催報告

都医学研夏のセミナー「基礎・技術コース」
神経系への遺伝子導入とその解析 (平成30年7月9日~13日実施)

神経細胞分化プロジェクトリーダー岡戸 晴生

神経系への遺伝子導入とその解析

夏のセミナーを開催しました。脳の働きを明らかにするために、特定の遺伝子を減らしたり増やしたりする必要があり、その場合遺伝子導入法は有用です。また、蛍光タンパクを導入して神経細胞の動きや形を解析する、あるいは光や薬に応答する蛋白を導入して神経細胞の活動を人為的に制御するにも遺伝子導入が必要です。特にアデノ随伴ウイルスは安全性が高いため、遺伝子治療にも使われます。

例年の神経系への遺伝子導入法実習に加え、今回は神経系の機能解析法も合わせて行いました。遺伝子導入法として、アデノ随伴ウイルス作製法、脳へのウイルス(トレーサーで代用)微量注入法、子宮内エレクトロポレーション法、脳の初代神経培養法、そして、機能解析法として、スライスパッチクランプ法と脳波測定です。例えば、ある蛋白が海馬の長期増強の原因であるという仮説を証明するために、その発現を抑制する核酸を緑色蛍光タンパク(GFP)とともに発現するアデノ随伴ウイルスを脳の海馬部分に注入し、スライスを作成し、GFPを頼りにその蛋白を人為的に発現抑制したニューロンを同定し、パッチクランプ法により長期増強が抑制されているか否かを調べるという実験が可能となります。

参加者は、大学の研究者、大学の技術者2名、大学院生の4名です。こちらは、岡戸、平井、田中、高沢、三輪(国立精神・神経医療研究センター)で対応しました。ウイルス、細胞から個体レベルまで、やや盛りだくさんでしたが、充実した内容であったと思います。皆さん熱心に取り組んでいただきました。私にとっては、各々の研究内容や研究環境の話など、有意義な楽しい一週間でした。受講生の皆様に少しでも役立つことを願っています。

ページの先頭へ