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開催報告

第3回 都医学研都民講座(平成27年7月15日実施)

東京医学総合研究所は都民の皆様向けに年8回ほど講演(都民講座)を行い、当研究所の研究成果の一端や関連する最新情報などを分かりやすくお伝えしています。

「歩行の科学からみた認知症とパーキンソン病」
-高齢者の脳の健康と転倒予防のために-

講師:東京都医学総合研究所 副参事研究員内原 俊記

講師:東京医科大学 医学教育学分野 教授三苫 博

講師:順天堂大学医学部附属静岡病院 脳神経内科 教授大熊 泰之

内原 俊記
三苫 博
大熊 泰之

二足歩行といいますが、両足が地についたままでは前進できません。片足立ちでバランスをとりながら残った足を踏み出すという動作を交互に繰返すのが歩行で、極めて複雑な神経機能であることがわかります。

三苫博教授(医学教育学)は歩行分析機器の軽量化に成功し、臨床応用されています。前半で、歩行の神経メカニズムをわかりやすくお話しいただき、この機器のデータを示しながら、その乱れが加齢や認知症に伴って起こってくる様子をご説明下さいました。歩きにくくなっても、訓練で代償する能力が脳には備わっているとのお話には眼を開かれました。

後半は、パーキンソン病臨床の第一人者、大熊泰之教授(脳神経内科)に実際の患者さんに即してお話いただきました。パーキンソン病の薬が効きにくい症状の一つがすくみ足などの歩行障害です。同様の症状でお悩みの方からのご質問も会場から頂戴し、外来では十分に聞けない病気の仕組みや対処についても具体的なお話を伺うことができました。

猛暑にもかかわらず満員となった会場は、両教授の巧みなお話に引き込まれて静かな熱気に包まれました。普段は意識しない歩行の中に、奥深い科学と役に立つ臨床があることを考え直す、密度の高い機会を都民の方々と共有できたとすれば幸いです。抽選に漏れてご参加いただけなかった多数の方々にこの場を借りてお詫びすると共に、今回の都民講座を成功に導いて下さった関係者の御尽力に篤く御礼申し上げます。

認知症・高次脳機能研究分野 内原 俊記

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