2026年1月22日
社会健康医学研究センター 西田淳志センター長らの国際的な研究グループは「思春期に孤独感が持続すると精神症・抑うつ・不安・幸福度低下につながることを確認―孤独感が改善すれば影響が軽減される可能性―」について国際学術誌Journal of Child Psychology and Psychiatry に発表しました。
国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所行動医学研究部 成田瑞 室長、キングス・カレッジ・ロンドン Gemma Knowles 講師、東京都医学総合研究所社会健康医学研究センター 西田淳志センター長、東京大学大学院医学系研究科 笠井清登 教授(同大学国際高等研究所ニューロインテリジェンス国際研究機構(WPI-IRCN)主任研究者)らの国際的な研究グループは、思春期において孤独感が持続すると、精神症(幻覚や妄想のような体験)、抑うつ、不安、幸福度の低下といったメンタルヘルス不調につながることを確認しました。一方で、孤独感が途中で改善した場合には、これらのメンタルヘルス不調との関連が軽減されることも示されました。
本研究では、厳密なデータ解析手法を用いて、思春期における孤独感の「時間的な変化」と、その後のメンタルヘルスとの関連を検証しました。人とのつながりが大きく変化する思春期において、本研究の知見は、孤独感への早期の気づきや支援の重要性を示すものと考えられます。
本研究成果は、国際学術誌『Journal of Child Psychology and Psychiatry』に日本時間 2026年1月22日18時(英国時間:1月22日9時)にオンライン掲載されました。
孤独感は、思春期にしばしば経験される主観的な苦痛体験です。これまでの研究では、孤独感とメンタルヘルスとの関連が示されてきましたが、多くは単一時点で孤独感を評価したものであり、孤独感が持続する場合や改善する場合の影響を、時間的な変化として検討した研究は限られていました。そこで本研究では、思春期における孤独感を複数時点で評価し、その変化が後のメンタルヘルスにどのように関連するのかを検証しました。
本研究では、東京都内の思春期を対象とした縦断研究「東京ティーンコホート調査」に参加した 3,171 人のデータを用い、12 歳および 14 歳時点の孤独感と、16 歳時点のメンタルヘルス指標(精神症、抑うつ、不安、幸福度)との関連を分析しました。年齢、性別、体型、知能指数、家庭環境、近隣環境などの背景因子の影響を統計学的に調整しました。さらに、既存のメンタルヘルスの状態も統計学的に調整することで、因果の逆転のリスクにも対処しました。
その結果、12 歳および 14 歳の両方で孤独感が持続していた場合、孤独感がみられなかった場合と比べて、16 歳時点で精神症は約 2.4 倍、抑うつは約 3.0 倍、不安は約 2.2 倍、幸福度低下は約 1.7 倍のリスクとなっていました。また、14 歳時点で新たに孤独感がみられた場合も、同様に精神症、抑うつ、不安、幸福度低下のリスクが高くなっていました。一方で、12 歳時点では孤独感がみられたものの、14 歳までに孤独感が改善した場合には、精神症との関連は消失し、抑うつ、不安、幸福度低下との関連も軽減されていました。
本研究の結果は、孤独感が長期化するとメンタルヘルス不調のリスクが高くなる一方で、改善すればその影響が軽減される可能性があることを示しています。学校・地域・家庭における人とのつながりを支える取り組みや、早期の気づきと支援によって、孤独感を改善することが思春期のメンタルヘルスを守る上で重要であることが示唆されます。
本研究は日本学術振興会(JP20H01777, JP20H03951, JP21H05171, JP21H05173, JP21H05174, JP21K10487, JP22H05211, JP23H03174, JP23H05472, JP24H00666, JP24H00917, JP25K20564, およびJP24K16821)、東京大学(UTIDAHMおよびWPI-IRCN)、科学技術振興機構(JPMJPF2105およびRISTEX JPMJRS24K1)、厚生労働省(23AB1002)、ウェルカムトラスト(309118/Z/24/Z)の支援を受けて行われました。