東京都医学総合研究所のTopics(研究成果や受賞等)

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2026年1月4日
認知症研究プロジェクト樽谷愛理主席研究員、野中隆プロジェクトリーダー、大谷麗子研究技術員、長谷川成人副所長らは「原発性側索硬化症におけるAnnexin A11とTDP-43の共凝集」についてActa Neuropathologica Communications に発表しました。

English page

原発性側索硬化症におけるAnnexin A11とTDP-43の共凝集

発表論文

<論文タイトル>
“Co-aggregation of annexin A11 and TDP-43 in FTLD/MND with primary lateral sclerosis phenotype”
<発表雑誌>
Acta Neuropathologica Communications
DOI:10.1186/s40478-025-02210-w
URL:https://link.springer.com/article/10.1186/s40478-025-02210-w

研究の背景

原発性側索硬化症(Primary Lateral Sclerosis: PLS)は、上位運動ニューロンが主に障害される希少な運動ニューロン疾患(Motor Neuron Disease: MND)です。一方、代表的なMNDである筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis: ALS)は上位、下位運動ニューロンの両方が障害され、孤発例の大部分でTDP-43の蓄積病理が認められます。従来、PLSはALSと連続した疾患スペクトラム上に位置づけられてきましたが、両者を区別する明確な指標は十分に確立されていません。そのため、PLSがALSのサブタイプであるのか、あるいは独立した疾患であるのかについて、長年にわたり議論が続いています。

研究の概要

近年、TDP-43病理を伴う前頭側頭葉変性症(FTLD-TDP) Type C患者脳の解析により、Annexin A11(ANXA11)がTDP-43と共凝集していることが報告されました。さらに、TDP-43とANXA11がヘテロメリックなアミロイド線維を形成していることがクライオ電子顕微鏡構造解析により明らかにされました。そこで我々は、TDP-43病理を伴う疾患脳におけるANXA11の共凝集を免疫組織染色 学的に再検討しました。その結果、臨床的にPLSを呈するFTLD/MND(以下、PLS-TDP)においてANXA11が蓄積していることを見出しました。PLS-TDPでは、ALSに典型的なFTLD-TDP Type Bとは異なり、FTLD-TDP Type A様の リン酸化TDP-43陽性の神経細胞質内封入体と変性神経突起が観察され、これらの病理所見はいずれもANXA11陽性を示しました(図1)。さらに、PLS-TDP脳の生化学的解析の結果、PLS-TDPはFTLD-TDP Type A、B、Cとは異なるリン酸化TDP-43のバンドパターンを示し、ALSとは異なる生化学的特徴を有することが明らかとなりました(図2)。免疫電子顕微鏡観察では、PLS-TDP脳由来の線維構造物がリン酸化TDP-43とANXA11に二重標識され、Type Cと同様にヘテロメリックな線維を形成している可能性が示唆されました(図2)。本研究によりANXA11との共凝集は、PLSをALSと区別する神経病理学的および生化学的指標となり得ること、ANXA11のPLS-TDP病態への関与が示されました。今後、PLS-TDP脳の構造解析やANXA11を標的とした早期診断法の開発が期待されます。

本研究の主な助成事業

本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)、科学技術振興機構(JST)、日本学術振興会(JSJP) 科学研究費助成事業、UKRI MRC、Alzheimer's Research UK等からの資金提供を受けて実施しました。

図1
図1 PLS-TDPの神経病理学的特徴
PLS-TDPで観察されるリン酸化TDP-43とAnnexin A11 (ANXA11)陽性の神経細胞質内封入体と変性神経突起.
図2
図2 PLS-TDPの生化学的特徴
PLS-TDP特徴的なリン酸化TDP-43のバンドパターン(左)と電子顕微鏡で観察されるPLS-TDP線維のリン酸化TDP-43とAnnexin A11 (ANXA11)抗体による二重免疫標識(右).

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