| 演者 | 榎木 亮介 自然科学研究機構 生命創成探究センター 自然科学研究機構 生理学研究所 准教授 |
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| 会場 | ハイブリッド(講堂+Zoom) |
| 日時 | 2026年11月11日(水曜日)13:00~14:00 |
| 世話人 | 夏堀 晃世 睡眠プロジェクト |
| 参加方法 | 詳細は事前に下記問合せ先までご連絡ください |
| お問い合わせ |
研究推進課 普及広報係 電話 03-5316-3109 |
哺乳類の冬眠は、体温・代謝・神経活動を大幅に低下させ、食物が乏しく厳しい環境を生き延びる、究極の省エネルギー戦略である。冬眠中には、種によって体温が外気温近くまで低下し、心拍、呼吸、全身代謝、脳活動が著しく抑制される。それでも覚醒後には元の生理状態へ戻ることができる。さらに、数日ごとに多くのエネルギーを費やして覚醒し、再び深冬眠へ戻る。冬眠とは、大きく異なる生理状態を可逆的に往復する動的な生命現象である。機能を低下させた脳や身体は、どのように維持され、元の状態を取り戻すのだろうか。
私たちは、低温・低代謝状態における生理機能の可逆性に着目し、光計測と生理学的解析を組み合わせて研究を進めている。概日時計中枢である視交叉上核では、低温で停止したCa²⁺リズムが、復温に伴って位相を再設定して再始動する過程を明らかにした(Enoki et al., iScience, 2023)。さらに、視床下部Qニューロンの活性化によってマウスに可逆的な低体温・低代謝状態を誘導するQIHモデルを用い、全身糖代謝が体温依存的かつ可逆的に切り替わることを明らかにした(Lee et al., Nature Communications, 2025)。
また最近、in vivo二光子イメージングを用いて、QIH前・中・回復後の海馬CA1で同一樹状突起を8日間追跡した。その結果、QIH中に多数のスパインが一過性に消失する一方、復温後にはその多くが元の位置へ再出現する過程を捉えた。さらに共同研究により、大規模なシナプス消失にもかかわらず、記憶と海馬の空間表現が保持され、エングラム細胞間に形成されたクラスター状のシナプス配置が優先的に保存されることを見いだした(Lin et al., Science, 2026)。
本講演では、冬眠研究の背景と生物学的・医学的意義を紹介し、これらの成果を中心に、冬眠が問いかける代謝制御と脳神経機能の謎について議論する。