HOME広報活動刊行物 > October 2014 No.015

開催報告

都立府中キャンパスにおける病院等および地域連携 教育講演会の報告
− 神経・筋疾患における非侵襲的人工呼吸療法・日常生活管理の留意点 −

講師:国立病院機構八雲病院 石川 悠加氏

本年6月20日の夕方、東京都立多摩総合医療センター講堂において、都立神経病院と当研究室との共催で(後援:都立多摩総合医療センター、小児総合医療センター、都立府中療育センター)教育講演会を実施しました。非侵襲的人工呼吸療法は、鼻や口にマスクを装着するあるいはマウスピースをくわえるなどによって人工呼吸・補助を行う方法で、気道分泌物の管理方法、また食物や水分を呑み込む嚥下機能、肺の状態、他の病状に応じて適正な機種を選定し呼吸設定を行うこと、個々の病状と日常生活活動に応じたインターフェイス(マスクなど)を使用すること、などに多様性があり、神経・筋疾患医療・在宅医療の現場では、その実施法・管理法が充分には普及しておらず、個々の現場で苦慮しているのが現状です。

本講演会では、都医学研・副所長新井信隆先生がご挨拶を、また神経病院・部長川田明広先生が座長をお引き受けくださり、多摩地区および特別区にある訪問看護ステーションや診療所、保健所等から約40名、都立神経病院等キャンパス内から10数名の方がともに集い、この道の権威でいらっしゃる石川先生のお話を伺いました(写真1、2)。

写真1、写真2
写真3

写真3は、電動車椅子チームメンバーの中坪勇祐氏です。中坪氏は、24時間の非侵襲的人工呼吸療法を鼻マスクで実施しながら、わずかに動く指で電動車椅子を操作し、足元につけた“フットガード”で直径32.5cmのサッカーボールを操り、ゴールをめざして時速6kmでコート内を走りまわります。この活動を可能にするためには、病状に応じた呼吸設定の変更や栄養管理などの専門医療が、加えて、視野が妨げられない鼻マスク、高速で走り、ぶつかったときも人工呼吸器が落下しないような工夫、などが必要となります。中坪氏も、演者石川先生からの助言を受けておられるおひとりです。

個別性と専門性の高い安全な先駆的な非侵襲的人工呼吸療法についてのご講演から多くのことを学ばせていただき、石川先生に心より感謝を申し上げる次第です。


さて、府中キャンパスは、都立病院のなかで最大の神経・筋疾患医療拠点といっても過言ではありません。そして都医学研は旧神経研代からひきつづき府中キャンパスの医療機関、あるいは地域の支援機関と多くの連携研究を実施してきましたし、現在も実施しています。様々な連携活動のなかで、いち早く把握された課題をテーマとしたこのたびの教育講演会は、専門医療・研究拠点としての学びの機会となったばかりでなく、府中キャンパスから地域の支援機関に向けて最先端の専門医療について発信する機会ともなりました。こういう企画が、思いついたときにいつでも簡単に自由に実施できる、そういったしくみづくりが、今後とても必要なのではないか、とも感じました。

(神経変性病理プロジェクト 難病ケア看護研究室 小倉朗子・中山優季・原口道子)

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