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平成28年度 医学研セミナー

コオロギの学習におけるオクトパミンおよびドーパミンニューロンの役割

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演者 水波 誠
北海道大学大学院理学研究院 教授
会場 東京都医学総合研究所 2B・2C会議室
日時 平成29年2月17日(金)16:00~17:00
世話人 齊藤 実(基盤技術研究センター センター長)
参加自由 詳細は下記問合せ先まで
お問い合わせ 研究推進課 普及広報係
電話(03)5316-3109

講演要旨

昆虫の学習研究の多くはショウジョウバエ及びミツバチを用いて行われてきたが、私達は昆虫の中で系統的に古いフタホシコオロギに着目し、学習・記憶とそのメカニズムについて研究している。コオロギは優れた学習能力を持ち、行動薬理実験に適しているのみならず、ゲノム解読が完了しRNAiによる遺伝子ノックダウンやCRISPR/Cas9による遺伝子ノックアウトが容易であるなど実験上の利点があり、他の昆虫では取り組みが困難な研究課題の開拓を可能としている。

私達は、コオロギの連合学習のメカニズムにはショウジョウバエとは異なる点が幾つかあることを示してきた。例えばショウジョウバエでは匂いと報酬や罰との連合学習において、報酬情報も罰情報もドーパミンニューロンにより伝えられることが示されているが、コオロギの連合学習では、報酬情報はオクトパミンニューロンにより、罰情報はドーパミンニューロンにより伝えられることが薬理実験、RNAi、遺伝子ノックアウト実験により明らかになっている。

一方、私達は、哺乳類と昆虫の学習の基本メカニズムに深い共通性があることを示してきた。例えばコオロギでは報酬及び罰記憶の読み出しにオクトパミン及びドーパミンニューロンの活性化が必要であるが、この現象を説明するために私たちが提案した学習モデルは、哺乳類と昆虫の連合学習の基本メカニズムに共通性があることを示している。さらに哺乳類の学習は「報酬予測誤差」、すなわち動物が予測する報酬と実際に受け取る報酬の差に基づいて起こることが示されているが、この予測誤差学習理論がコオロギの学習にも当てはまること、またオクトパミン及びドーパミンニューロンが報酬学習及び罰学習においてそれぞれ予測誤差の情報を伝えることを示唆する結果を得た。

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