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平成28年度 医学研セミナー

iPS細胞由来ミニ臓器移植によるヒト臓器の創出

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演者 武部 貴則
シンシナティ小児病院 准教授
会場 東京都医学総合研究所 2階講堂
日時 平成28年10月31日(月)16:00~17:00
世話人 宮岡 佑一郎 (再生医療プロジェクトリーダー)
参加自由 詳細は下記問合せ先まで
お問い合わせ 研究推進課 普及広報係
電話(03)5316-3109

講演要旨

多能性幹細胞を用いた細胞の分化誘導研究において、目的とする機能細胞のみならず、血管、血液、間質、神経などの支持細胞を含む立体的な構造の時間変化および空間変化を再現することが必要であるという仮説が有力になりつつある。

近年、われわれは、胎内において器官原基が形成される時空間的な細胞間相互作用を模倣する新規の細胞培養技術(器官原基法)を開発し、試験管内においてヒトiPS細胞から立体的な肝臓原基を創出することに成功した。本法により創出したヒトiPS細胞由来肝臓原基は、免疫不全マウスに移植することにより、ヒト血管網を有した機能的なヒト肝臓を構築し、治療効果を発揮可能であること、すなわち、亜急性肝不全モデル動物の生存率を著しく改善することが判明した(Nature, 2013)。さらに、この方法を他の器官原基の創出に応用した結果、肝臓のみならず、腎臓、軟骨、膵臓、腸、肺、心臓、脳、がん細胞などを含むさまざまな細胞種から、立体的な複合組織を創出することに成功した(J Clin Invest, 2014; Cell Stem Cell, 2015)。中でも、試験管内で誘導したマウス腎臓原基の異所性移植においては、最終的に尿を産生する腎組織を生みだすことが示されている。本法は、さまざまな器官の再生医療応用のみならず、新たな医薬品開発のためのツールとしても応用が強く期待される。

本講演では、われわれが確立した器官原基(ミニ臓器)の人為的構成法について概説するとともに、代謝性肝疾患を対象とした臨床応用の実現を目指す最新の開発動向を紹介する。さらに、今後の再生医療・創薬応用における出口戦略の構築へ向けた開発イメージを共有し議論を深めたい。

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