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平成26年度 医学研セミナー

脱フコシルヒト型化抗CCR4ならびにCD4抗体のがん治療薬としての開発研究

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演者 松島 綱治 (東京大学大学院 医学系研究科 分子予防医学分野 教授)
会場 東京都医学総合研究所 講堂
日時 平成27年3月23日(月)16:00
世話人 原 孝彦 参事研究員(幹細胞プロジェクト)
参加自由 詳細は下記問合せ先まで
お問い合わせ 研究推進課 普及広報係
電話(03)5316-3109

講演要旨

ケモカイン受容体CCR4抗体開発

抗CCR4抗体は、1996年に始まった松島と協和発酵の共同研究の成果に基づき作製・開発された。近畿大学の義江は我々の抗体を用いて皮膚浸潤性を特徴とするATLLにCCR4が強発現することを見いだし、名古屋市立大学の上田を統括医として本抗体の臨床治験がATLL患者を対象に国内で実施、有効な治療法に欠くATLLに対して劇的効果を示し、2012年認可された。この抗体は、中和抗体ではなくヒト型化抗体IgG1のFc部分にフコース付加がない(これによりFcgRIIIaに対する結合アフィニテイが100倍以上上昇)強力なADCC活性を有するポテリジェント抗体である。一方、CCR4はCD4+CD45RO+CD25++FoxP3+機能的Tregにも発現することから、この抗体投与により担がん時の免疫抑制が解除できるのでは、と期待されている。協和発酵キリンにより抗CCR4抗体とPD-L1等の免疫チェックポイント抗体との併用治験も企画されている。

ヒト型化CD4抗体の臨床開発

CTL機能誘導・維持の全ての局面にCD4T helpが必要ではなく、担癌マウスにCD4 depleting Abを投与すると抗腫瘍効果を示す事が報告されている。我々もこれを様々なマウス腫瘍モデルにて確認するとともに、担癌マウスにおいてCD4+細胞を除くと抗原特異的CD8+memory CTLの所属リンパ節での著明な増殖とCTLのがん部位への浸潤が起こる事を見いだした。さらに、CD4 depleting Abと様々なImmune checkpoint Abs、抗癌剤が相乗的に作用する事を見いだしている。幸いにもADCC活性を付加したヒト型化抗CD4抗体が協和発酵キリンで作成され、我々が創設したIDACにライセンス(第三者へのライセンス可能)されている。現在、厚生科学研究費の支援も受けながら抗体のGMP生産を進めるとともに2年以内の国立がん研究センターでのFirst in human医師主導第1相臨床治験を準備しているところである。本抗体により、担癌時のTregのみならず、CD4+IDO+pDCsやMDSCsも同時に除去できる、新たながん治療のための免疫制御抗体になる可能性を期待している。

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