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演者 | 的場 圭一郎 東京慈恵会医科大学内科学講座 糖尿病・代謝・内分泌内科 准教授 |
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会場 | ハイブリッド(講堂+Zoom) |
日時 | 2024年3月21日(木曜日)16:00~ |
世話人 | 三五 一憲 糖尿病性神経障害プロジェクトリーダー |
参加自由 | 詳細は下記問合せ先まで |
お問い合わせ |
研究推進課 普及広報係 電話 03-5316-3109 |
透析患者数は増加を続けており、慢性腎臓病の詳細な病態解明と根本的な治療法の確立が求められている。脂質異常症の治療薬として使用されるHMG還元酵素阻害薬(スタチン)は、多面的な臓器保護効果を有し、その分子機序の一つとして低分子量G蛋白質シグナルの抑制が知られている。低分子量G蛋白質は腎臓の正常構造と機能の維持に必要であるが、慢性腎臓病では過剰な活性化が認められ、スタチンは尿中アルブミン排泄量の増加や糸球体硬化に対して抑制的な効果を示す。特に、低分子量G蛋白質Rhoの標的分子であるRho-associated, coiled-coil-containing protein kinase(ROCK)は、糖尿病性腎症を有する患者や疾患モデル動物の腎組織で活性化されており、遺伝子欠損や特異的阻害薬投与によるROCKシグナルの遮断は、齧歯類における腎症の進展を抑制する。ROCKにはROCK1とROCK2という二つのアイソフォームが存在し、ROCK1はAMP-activated protein kinase(AMPK)、ROCK2はperoxisome proliferator-activated receptor α(PPARα)を負に制御することで腎臓のエネルギー代謝を抑制し、構造的・機能的障害を引き起こす。
現在、ROCK阻害薬は脳血管攣縮抑制薬、緑内障治療薬として臨床応用されており、drug repositioningによる症治療薬の開発が期待される。