- この都医学研セミナーは終了しました。-
演者 | 高松信彦 北里大学 理学部 生物科学科分子生物学講座 教授 |
---|---|
会場 | ハイブリッド(講堂+Zoom) |
日時 | 2023年4月7日(金曜日)15:15~ |
世話人 | 正井 久雄 所長 |
参加自由 | 詳細は下記問合せ先まで |
お問い合わせ |
研究推進課 普及広報係 電話 03-5316-3109 |
多くの哺乳動物は体温を約37℃に維持して生命活動を行なっている。昼行性の冬眠哺乳動物シマリスも活動期(4-9月)には約37℃の体温を維持しているが、冬眠期(10-3月)には約5℃の5-6日間の深冬眠と、体温を37℃に上げて摂食・排泄をする約1日の中途覚醒を規則的に繰り返す。シマリスを低温・恒暗条件下で飼育しても、年周性の冬眠を示すことから、シマリスの冬眠は内因性の概年リズムによって制御されていると考えられているが、概年リズムの実体については何もわかっていない。また、冬眠中に概日リズムが機能しているかについてもまだ結論は出ていない。私たちは、シマリスで冬眠期に血液中から減少するタンパク質複合体として発見された冬眠関連タンパク質(HP)の遺伝子発現の解析をきっかけに冬眠の研究を始めた。セミナーの前半では、HP遺伝子の発現制御機構の解析から明らかになった、冬眠に伴うエピジェネティクな転写調節について紹介する。セミナーの後半では、冬眠期の末梢時計に関する解析結果について紹介する。哺乳動物の末梢組織では、概日性の体温リズムによって覚醒時に活性化されたHSF1によって時計遺伝子Per2の転写が活性化され、末梢時計がリセットされる。冬眠期のシマリス肝臓においても、中途覚醒時の体温上昇によりHSF1が活性化され、Per2の転写も一過的に増加していたが、時計遺伝子Bmal1のmRNAは周期的な発現を示さなかった。概日リズムは時計遺伝子の転写翻訳フィードバックループに基づいているので、これらの結果から冬眠期には末梢時計は機能していないと考えられた。