- この都医学研セミナーは終了しました。-
演者 | 鈴木 章円 富山大学 学術研究部医学系 生化学講座 助教 |
---|---|
会場 | ハイブリッド(講堂+Zoom) |
日時 | 2023年7月13日(木曜日)16:00~ |
世話人 | 齊藤 実 副所長/基盤技術研究センター長/学習記憶プロジェクトリーダー |
参加自由 | 詳細は下記問合せ先まで |
お問い合わせ |
研究推進課 普及広報係 電話 03-5316-3109 |
我々は、新たな経験をした際に、関連する過去の経験の記憶と照らし合わせる。そして、過去の記憶に新しい情報を結びつけることで、過去の記憶がアップデートされる。このように記憶は永久に不変なものではなく、新たな経験によって意味表現は変化し、新たな知識の形成や、変化する日常に適応することができる。しかし、過去の経験の記憶が現在の情報とどのように相互作用し、記憶をアップデートするのかは明らかではない。
今回我々は、マウスにおいて、過去の経験時に活動した後部頭頂葉皮質(PPC)の神経細胞集団が、過去と現在の情報の相互作用を媒介し、記憶をアップデートすることを発見した。さらに、アップデートされた記憶(恐怖記憶)を思い出させた直後にPPCの神経細胞集団を光遺伝学的に抑制すると、海馬や扁桃体に保存されている個々の記憶に影響を与えることなく、この相互作用を解消し、恐怖記憶から恐怖を切り離すことに成功した。
今回同定したPPCの神経細胞集団は、1. 経験中に役割が生成される。2. 活動操作により記憶を制御することができる。という点は、特定の記憶情報を保持するエングラム細胞と共通している。しかし、今回の結果は、PPCの神経細胞集団の活動を抑制しても、個々の記憶に影響を与えなかったことから、PPCの神経細胞集団の機能はエングラム細胞の機能とは異なる。したがって、これらの神経細胞集団は、過去の記憶を保持しているのではなく、下流の脳領域に記憶をアップデートするよう指示すると考えられる。