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演者 | 山田 真太郎 京都大学大学院 医学研究科 助教 |
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会場 | ハイブリッド(講堂+Zoom) |
日時 | 2023年7月12日(水曜日)15:00~ |
世話人 | 笹沼 博之 ゲノム動態プロジェクトリーダー |
参加自由 | 詳細は下記問合せ先まで |
お問い合わせ |
研究推進課 普及広報係 電話 03-5316-3109 |
ゲノムDNAは一般的に二重らせん構造(B型)を取るが、その限りではない。DNAは、三重鎖や四重鎖など様々な構造を取ることが知られている。ピリミジンもしくはプリン塩基が連続した鏡面対照のDNA配列は、三重らせんを含む、非B型DNA構造に折り畳むことができる。ゲノム中の分子内三重らせん(H-DNA)形成配列は、哺乳類を始めとした多くの真核生物ゲノムに頻繁に出現する。また、これらのモチーフが変異原性を持つこと、DNAの複製、転写、その他のゲノム機能に影響することも知られている。本発表では、一本鎖DNA(ssDNA)特異的ヌクレアーゼS1を用いてゲノム中のssDNAを検出するS1-seq法を用いて、マウスゲノム中のH-DNAモチーフの三重鎖形成能を評価できることを報告する。
マウスの精巣細胞および脾臓B細胞由来のゲノムDNAをS1-seqで解析した結果、強いS1-seqのシグナルがH-DNAモチーフ配列上でみられ、モチーフの三重鎖形成能と強い相関があると分かった。このS1-seqのシグナルのパターンが、4種類あるH-DNA異性体の1つ(H-y5)に特異的であることも示唆された。さらに、マウスゲノム上に豊富に存在するH-DNAモチーフを体系的に解析することで、ピリミジンリピートの長さや、リピート中の塩基置換がH-DNAの構造をどう変化させるのかを明らかにした。S1-seq法で検出されたH-DNAが、in vitroで形成されたものか、in vivoで既に存在していたものかを現在、検証している。本手法で全ゲノムDNAの二次構造を高分解能で調べることは、癌などの病気に関わるゲノム不安定性をDNA構造の観点から理解する手掛かりとなる。