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開催報告

平成25年度 第6回都医学研 都民講座
摂食障害からの回復と社会復帰を考える

東京医学総合研究所は都民の皆様向けに年8回ほど講演(都民講座)を行い、当研究所の研究成果の一端や関連する最新情報などを分かりやすくお伝えしています。

講師:白梅学園大学教授西園 マーハ 文

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12月18日、「摂食障害からの回復と社会復帰を考える」と題し、白梅学園大学子ども学部発達臨床学科 教授の西園マーハ文先生を講師にお迎えして、第6回都医学研都民講座を開催しました。

まず最初に、西園先生から、「摂食障害」について基本的な説明がありました。摂食障害には、大きく、神経性無食欲症(拒食症)Anorexia nervosaと神経性大食症(過食症)Bulimia nervosaがあります。代表的な症状として、拒食症では、「体重だけで自己評価が決まる」「自分の内的感情の気づきにくさ」、過食症では「失コントロール感」などが挙げられ、『ダイエットが高じているだけなのでは』といった表面的な理解では不十分であり、症状の背景には深刻なこころの問題があることが指摘されました。

また、100年前のイギリス人医師ウィリアム・ガル先生(拒食症の命名者)が、看護師につきっきりで食事をさせ、体を温めて治療させたことや、250年近く前の江戸時代の香川修徳という医師が治療法として、「不食(拒食症)は、強いて治せざるを以って、真の治法と為す(食事や薬の強要ではなく、しっかり見守ることで治す)」と当時の治療法を記し残したこと等が紹介され、摂食障害は現代だけでなく、昔からみられる疾患であることのお話がありました。

最後に、「回復とは、回復を助ける治療とは?」について、研究での知見を交えて解説されました。米国での重症例の追跡研究の結果から、部分回復(体重・月経の回復)は、完全回復(心理面の回復)に先立って生じる事が確認されていること、従って短期では完全回復率は低いが、2年~8年後には目覚ましく回復率の上昇がみられること、また、幅が狭くワンパターンに陥っている日常生活を、ガイデッドセルフ(指導付きセルフヘルプ)という考え方を活用し、当事者が主体性を持ちながら変えていくことが、回復の大きな助けになること等の説明をいただきました。

講演の終わりには、日本に摂食障害の専門病院や摂食障害協会を早急に設立する必要性のご紹介もありました。当事者、ご家族、専門家が協働し、摂食障害という課題に取り組んでいける体制・仕組みづくりを早期に実現する必要性を改めて感じました。

講演終了後のアンケートでも「当事者の家族として、今後の参考になりました」「わかりやすかった」といった声が寄せられるなど、充実した講演会となりました。

精神行動医学研究分野 新村 順子

 
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