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開催報告などを掲載しています。




平成26年12月14日

サイエンスカフェin上北沢「運動と脳 手の動きからよみとる予測と修正のはたらき」を開催しました。

会場:東京都医学総合研究所 講堂

講師:筧 慎治(東京都医学総合研究所 運動失調プロジェクト プロジェクトリーダー)

12月14日(日)、公益財団法人東京都医学総合研究所の講堂において、「サイエンスカフェin上北沢 運動と脳 手の動きからよみとる予測と修正のはたらき」が開催されました。サイエンスカフェは、お茶や音楽とともに気楽な雰囲気の中で、身近なサイエンスについて研究者と自由に語り合う場です。

17回目のサイエンスカフェとなる今回は、身体を動かす脳の働きについて、当研究所の筧慎治研究員が話題提供をしました。まず前半では、「身体を動かす脳の仕組みの基本」というテーマで、身体を動かす脳の2つの基本的な働きの存在に ついてイラストを交えて解説がありました。

後半の体験では、参加者一人ひとりが、運動時に、脳内で絶え間なく行われる「予測と修正」の動きの成分を、リープモーション(手の動きを検知する機器)を使って、2回計測しました。計測後、混ざり合った「予測と修正」の2つの動きの成分は、瞬時にパソコンの画面に棒グラフで別々に表示されます。参加者はグラフを見ながら、研究者から繰り返し運動を行うと、予測が良くなり修正すべき誤差が減るため、修正の成分が減るとの解説を受けました。しかし、1回目と2回目の結果に明確な差が出ない参加者もおられ、各テーブルからは、「繰り返しによる経験には個人差があるという解釈でよいです?」といった、鋭い考察も出るなど、大変盛り上がりました。

次に、マッサージ器の振動刺激を使った運動錯覚現状の体験では、多くの参加者が、本当は伸びていないのに、「手が伸びている」といった不思議な感覚を楽しみました。自由に研究員と話したり、脳模型を組み立てたりと、工夫を凝らした内容に、参加者からは「脳の不思議さが、まだ解明されていないことが一番印象に残りました。」、「脳の『不思議さ』に感動しました。本当に楽しかったです。」、「難しい内容をわかりやすく教えていただきました。」といった声が多 数寄せられました。

都民の皆さんの研究所として、今後もこうした催し物を実施していきます。



平成26年11月20日

第9回 都医学研国際シンポジウム「精神疾患を抱える若者の回復」

会場:東京都医学総合研究所 講堂

11月20日(木)、公益財団法人東京都医学総合研究所では、「精神疾患を抱える若者の回復」をテーマにした第9回都医学研国際シンポジウムを、当研究所2階講堂にて開催しました。主宰者である、当研究所「心の健康プロジェクト」は、社会精神医学的手法による研究デザイン立案、効果評価法検討、結果解析などにおける研究の質を向上させ、優れた学術的成果とともに、広く都民の心の健康づくりに資する社会還元を目指しています。

今回のシンポジウムは、世界各地の研究者や医療技術関係者に加え、当研究所からも飛鳥井望副所長をはじめ、多くの研究者が出席しました。冒頭、副所長から「3つの研究所が統合し、その高い研究成果を世界に向け発信するため、年数回、国際シンポジウムを開催しています。第9回となる今回は、”精神疾患を抱える若者の回復”と題して、開催いたします。近年、精神科医療における早期介入・早期支援の実践が国際的に広まりつつあります。そのような中、多くの世界的に高名な専門家に来ていただき開催できることに感謝します。今回のシンポジウムが、参加する全ての人にとって意義深く、価値あるものになることを祈っています。」と挨拶がありました。

シンポジウムでは、イングランド国立精神保健研究所早期介入プログラム国家プロジェクト責任者のジョー・スミス教授(右上写真)が「iFEVR(International First Episode Vocational Recovery)※1の成果について」、王立ロンドン大学のフィオナ・ゴラン教授が「初回精神病※2エピソードを経験している若者の身体的健康」、セントビンセント病院のキャサリン・サマラス教授が「HeAL国際宣言※3の達成目標」と題して、新規性に富んだ素晴らしい講演を行い、心の健康プロジェクトの西田淳志主席研究員など計22名の国内外の研究者から、精神疾患を抱える若者の回復に関する新しい知見が報告され、活発な議論が展開されました。

※1iFEVR(International First Episode Vocational Recovery)…
精神病の若者の復学・復職支援を科学的知見に基づいて積極的に推進する当事者、臨床家、研究者、経済学者等からなる国際ネットワーク
※2初回精神病…
明らかな幻聴や妄想を初めて経験した状態をいい、特定の病気の名前ではない。
※3HeAL(Healthy Active Lives)国際宣言…
精神病症状の治療を受ける若者が、心も体も元気に生き生きと暮らすことを支援する国際共同声明


平成26年12月3日

平成26年度 第6回都医学研 都民講座:「知っていますか?レビー小体型認知症」

会場:津田ホール

講師:横浜市立大学 名誉教授小阪 憲司

12月3日(水)、公益財団法人東京都医学総合研究所は津田ホールにおいて「知っていますか?レビー小体型認知症」と題し、横浜市立大学名誉教授の阪憲司先生(左 写真)を講師にお迎えして、第6回都医学研民講座を開催しました。

今回の講演では、小阪先生から最初に「高齢者認知症」ついて説明がありました。厚生労働省の発表では65 歳以上の 人歳以上の15%が認知症であること、 認知症の原因は大きく「アルツハイマー型 (50%)」「レビー小体型(20%)」「脳血管型(15%)」の 3つに分かれること、レビ ー小体型認知症の頻度が高い 割には、まだ充分られてー小体型認知症の頻度が高い 割には、まだ充分られてー小体型認知症の頻度が高い割には、まだ充分に知られていないこと、診断が難しいこと等の解説がありました。

次に、「レビー小体型認知症の歴史」ついてお話がありました。今から100 年前、パーキンソ病の患者さん脳からレビー小体が発見れたこと。その後、長らくビー小体は脳幹のみで、 大皮質に見られないという常識が広まる中、1976年に、小阪先生が最初のレビー体型認知症を報告したこと。その後も症例を報告し、1984年には「びまん性レビー小体病」と名づけたこ。それ以降、 欧米でも注目さるようなり1996年には診断基準を発表、臨床診断が可能になったこと等ついてお話がありました。

最後に、「早期診断の重要性とその回復」ついて研究で知見を交え、解説されました。他の病気と誤診れると、服用す薬によっては症状がかえって悪くなこ。またレビー小体型認知症であること見逃し、治療が遅れると回復がより困難になること等について、多くの臨床例を交え紹介ただきました。

介護には「家族の支援」も大切とのお話のとおり、講演後質問で個別ケースについて親身なっ丁寧に回答されるその姿からは、一人の臨床医として家族を大切にするという想の強さが、ひしひしと伝わってきまた。

講演終了後のアンケートでも「当事者家族として、今後の参考になりました。 」、「わかりやすかった。」とい声が寄せられるなど充実し講演会となりました。 


平成26年10月17日

平成26年度 第5回都医学研 都民講座:「ウイルス感染症と戦う」

会場:津田ホール

講師:ウイルス感染プロジェクトリーダー 小池 智
国立感染症研究所・エイズ研究センター センター長俣野 哲朗

第5回都民講座が去る平成26年10月17日(金曜日)、千駄ヶ谷の津田ホールにて行われました。

今回は『ウイルス感染症と戦う』というテーマを掲げ、東京都医学総合研究所が主催し、文科省新学術領域研究班「ウイルス感染現象における宿主細胞コンピテンシーの分子基盤」の共催として行わせていただきました。本年もエボラウイルスのアフリカでの流行や我が国でのデングウイルスの流行があり、ウイルス感染症に関する関心や危機感が高まっているところです。そのような背景もあり、当日108名の方々が講座に参加されました。

講座はまず、筆者がウイルスの特徴、感染のメカニズム、ウイルスと宿主の戦いについて概説しました。その後私が「手足口病の重症化を探る」というタイトルで、近年アジア諸国で大きな流行を見せているエンテロウイルス71による手足口病の現状を概説し、その対策として我々が行なっている都プロジェクト研究並びに新学術領域研究班としての取り組みについて説明させていただきました。続いて国立感染症研究所・エイズ研究センター・センター長の俣野哲朗先生に「エイズ克服へのチャレンジ」というタイトルで、現在の世界並びに日本にエイズの発症状況、発症のメカニズム、行政の取り組み、さらにご自身の研究であるエイズワクチン開発について非常に分り易い解説をしていただきました。

我が国では高校までの教育課程の中にウイルス感染症の教育はありません。従ってウイルス感染症に対する知識の浸透は非常に大切なことです。講座を通じてウイルス感染症研究の重要性と困難さはご理解いただくことができたのではないかと考えております。また、日頃は都民の方々に直接研究成果を伝える機会はあまりないので、この機会に基礎研究から都民への還元の連続性を考えることの重要性を再認識することができた次第です。一部の方々から内容が難しいとお叱りも頂きましたことは反省点として、ご参加いただいた方々に深く感謝申し上げます。 

平成26年10月8日

世界脳週間講演会を開催しました

10月8日(水)、公益財団法人東京都医学総合研究所は、東京学芸大学附属高等学校において「のぞいてみよう脳神経科学」と題し「世界脳週間 2014講演会」を開催しました。

「世界脳週間」とは、脳科学の科学的な意義と社会にとっての重要性を一般の方々に理解いただくことを目的として、世界的な規模で行われるキャンペーンです。日本でもこの「世界脳週間」の意義に賛同し、「脳の世紀実行委員会(現・特定非営利活動法人 脳の世紀推進会議)」が主体となり、高校生を主な対象として講演会等の事業が行われています。

当研究所も、「脳の世紀推進会議」から世界脳週間参加事業の実施委託を受け、東京学芸大学附属高等学校において当研究所の研究員を講師とした講演会を開催しました。

今回の講演会では、最初に、松野元美研究員が「記憶の仕組み」と題し、「記憶の仕組みはどうなっているのだろうか?」というテーマでお話がありました。まず、単純な構造の脳を持った動物を使って記憶の仕組みの研究を進めてきたこと、記憶をつくるには遺伝子が必要であること、そして記憶に関わる遺伝子の見つけ方などのお話しがありました。中でも、記憶に関わる遺伝子は、ハエからほ乳類までほぼ一緒であるということの説明には、皆意外そうな表情をしていました。次に「記憶はどうしたら良くなるか?」では、一夜漬けよりも繰り返し復習する方が効果があること、記憶には睡眠が深く関っていること、また、空腹が記憶力をアップさせることなど、最新の研究成果が披露されました。

島田忠之研究員は「神経細胞が正しい標的に向かって伸びるための仕組み」と題し、講演を行いました。最初に、神経細胞について解説をした後、「軸索の伸長」「軸索のガイダンス」「枝分かれの制御と疾病」という3つのテーマでお話がありました。「軸索の伸長」では、軸索が伸びるときに何が起きるのか、伸びるために必要な環境として、クラッチタンパク質というものが、軸索が伸びるための足場として重要だということについて、動画を交えながら解説がありました。次に「軸索ガイダンス」では、正しい方向に導く因子群(ガイダンス因子)が数多くあり、ガイダンス因子を受け止める受容体(レセプター)も、沢山あるという説明がありました。方向制御の実例として、身体の左右の情報を伝える重要な神経(交連神経)の軸索伸長について取り上げました。交連神経は、最初、ガイダンス因子は濃度が濃い方に伸びていくが、ガイダンス因子の濃度が一定に高まると、今度は方向を変えて、濃度の薄い方に伸びていくという巧妙な仕組みには、驚きがありました。最後に「枝分かれの制御と疾病」では、軸索の枝分かれが正確に制御されれば、記憶や学習に役立つが、枝分かれが多すぎると病気を招くということの最新の研究成果も紹介されました。

高校生たちは、興味深く耳を傾け、最初から最後までメモをとったり、いくつもの質問をしたりするなど、眠気とは無縁の熱心な講演会でした。

平成26年9月19日

平成26年度 第4回都医学研 都民講座:若年性認知症を地域で支えるために

会場:津田ホール

講師:熊本大学神経精神科教授 池田 学

「若年性認知症」とは64歳までに認知症を発症する場合を言います。老年期(65歳以上)発症の認知症と異なり、家計や家庭を支えている年代であること、高齢者の場合より社会的支援体制が不十分であることなど、多くの問題を抱える領域です。講師の池田学熊本大学教授は、本邦における認知症臨床医学の中心的研究者・指導者のひとりであるとともに、全国に先駆けて、熊本県において、認知症疾患医療センターを核とする認知症の医療・支援体制を構築したことでも知られています。その手法は「熊本モデル」と呼ばれ、他の地域における認知症疾患医療センター整備の見本となっています。

池田先生の講演は、まず若年性認知症の診断の難しさを説明することから始まりました。老年期の認知症は発症から平均3年で専門外来を受診するのに対して、若年性認知症では平均5年を要するという調査結果が示されました。本人・家族にも、かかりつけ医にも、「まさかこの年齢で認知症とは、、、」という先入観があります。さらに、臨床像が高齢発症の場合と異なることがあります。まず、高齢者では過半数を占めるアルツハイマー病の割合がやや低く、かわりに前頭側頭型認知症が多い、アルツハイマー病であっても若年性の場合は、男女差がなく(高齢では女性>男性)、記憶障害はやや軽く、一方、注意障害、視空間性障害、言語理解障害などは重い傾向があるなど病像が異なります。

適切に診断されたとしても、その後の治療や介護に難しい点があります。仕事をどうするか、それに関連して家庭の経済的問題、デイケアに通う場合でも対応可能な施設が少ないこと(居場所のなさ~大半の施設は高齢者を前提としたプログラムを提供している)などが若年性認知症の医療・介護を困難にしています。さらに行動症状が強く社会的トラブルを引き起こすことが多い前頭側頭型認知症の割合が大きいことも問題です。

このような説明の後、上述の「熊本モデル」はこのような若年性認知症の当事者・家族を支える機能も果たしていることが紹介されました。熊本大学が基幹型センターとなって人材育成につとめ、県内9ヶ所に設置した地域拠点型センター(県内全域に“乗用車で30分以内の距離”を目安に配置されている)に専門家を派遣して、そこを起点として地域包括支援センターやかかりつけ医との連携をはかることで、より専門性の高い医療・支援の提供が可能になったということでした。


平成26年8月24日

サイエンスカフェin上北沢「ストレスと音楽を科学する」

会場:東京都医学総合研究所 講堂

8月24日(日)、(公財)東京都医学総合研究所の講堂において、「サイエンスカフェin上北沢ストレスと音楽を科学する」が開催されました。サイエンスカフェは、お茶や音楽とともに気楽な雰囲気の中で、身近なサイエンスについて研究者と自由に語り合う場です。

第16回目のサイエンスカフェとなる今回は、ストレス反応や、音楽と言語の不思議な関係などについて、当研究所の林雅晴研究員(脳発達・神経再生研究分野)が話題提供をしました。まず前半では、「ストレス反応とは?」というテーマで、体にストレスが加わると刺激が脳に伝わり、内分泌系を介して、体にストレス反応が生じることについて解説がありました。次に「唾液中のアミラーゼ測定」について、測定結果でストレス度合いを調べられることや、計測の仕方などについて説明がありました。

参加者の方全員で、計3回の唾液アミラーゼ計測をしました。第1回目は、何もしない状態での計測。第2回目は、歌を歌った後の計測。第3回目は、ゆったりと音楽鑑賞をした後の計測。実験前の予測では、人前で歌を歌うことのストレスによ り、測定値が上がり、音楽鑑賞の後では、リラックスすることで、測定値は下がる予定でした。しかしながら、実際には多くの方が、3回目の計測で、数値が上がりました。

質問タイムでは「何故、音楽を聴いた後、ストレスレベルが上がったのか?」との質問に対しては、仮説ではあるが、少し照明を落とした雰囲気の中で音楽を聴くことは、一人であればストレスとならないが、本日初対面の人と、照明を落とした空間で時間を共有することが、逆にストレスになったのではないかということでした。

アミラーゼ計測の体験の他、クイズをしたり自由に研究員とお話ししたりと、工夫をこらした内容に、参加者からは「無料であることが申し訳ないほどのよいサイエンスカフェでした。」、「ウィットに富んだ進行も最後まで楽しく参加させ ていただくことが出来ました。」、「多くの方がとても丁寧に関わって下さり、感動しました。」といった声が多数寄せられました。

都民の皆さんの研究所として、今後もこうした催し物を実施していきます。


平成26年8月6日〜21日

都立高校生のための都医学研フォーラム

会場:東京都医学総合研究所 講堂

8月6日(水)と8月21日(木)、(公財)東京都医学総合研究所において「都立高校生のための都医学研フォーラム」が開催されました。

「都立高校生のための都医学研フォーラム」は、医科学・生物学研究に興味を持つ都立高校の生徒を対象に、都医学研の研究成果を分かりやすく伝え、研究室や中央機器室で簡単な実験や機器操作を実際に体験してもらうことにより、将来の進路選択の一助となるよう、今年度から教育庁と協力して開催することとなりました。今回は定員60名のところに、80名の応募となり、科学に対する高校生の関心の高さがうかがえました。

午前中に、ウイルス感染プロジェクトリーダー小池智副参事研究員から「遺伝子改変動物を使ったウイルス学研究」というテーマで、ウイルス治療薬の有効性、安全性のデータを得るために、遺伝子改変技術を用いたモデルマウスを確立したこと、幹細胞プロジェクトリーダー原孝彦参事研究員からは、「再生医療:iPS細胞に夢を託して」というテーマで、再生医療研究の歴史と、iPS細胞によって、将来実現可能となる医療について、講演が行われました。午後は、神経細胞分化プロジェクト研究室において、自分で染めて作成した、マウスの光る脳細胞を蛍光顕微鏡で観察しました。また、神経病理解析室では、脳病理標本作成及びデータベース化技術の紹介とデータベースコンテンツの閲覧をし、電子顕微鏡室では、高い技術を要する微細な試料作成のデモンストレーションを見学した後、電子顕微鏡を操作してその画像を見て、10億分の1のナノの世界を観察するなど中央機器室で簡単な実験や機器操作を実際に体験しました。

その後、講演をした研究者、見学をした研究室・中央機器室のリーダーを交えた意見交換会が行われました。大変活発な質疑応答が交わされ、終了後も残って研究員に質問をしている生徒の姿も見受けられました。

参加した生徒からは、「いろいろなことを知ることが出来、自分の将来の進路の参考になりました。」、「生命科学について、こんなにわかりやすく説明してもらったのは初めてで楽しかった。」、「講演は、基礎的な内容から説明していただき、入り込みやすく、面白かった。」、「学校では見ることが出来ない電子顕微鏡、脳標本の実物、教科書に載っているように細胞がはっきり見ることができて良かった。」と言った声が寄せられました。

当研究所では、来年度以降も、教育庁と協力して「都立高校生のための都医学研フォーラム」を実施していく予定です。

平成26年7月11日

平成26年度 第3回都医学研 都民講座:聞こえと遺伝子 ~難聴のメカニズムと先端医療~

会場:津田ホール

講師:東京医科歯科大学 名誉教授 喜多村 健

前日までの台風がウソのように晴れ渡った7月11日、第3回都民講座を開催いたしました。

今回は「聞こえと遺伝子~難聴のメカニズムと先端医療~」と題し、長年に渡り、難聴治療と難聴研究に携わってこられた東京都医科歯科大学名誉教授の喜多村健先生にお話し頂きました。講演では、耳の構造、生理、病気などの基礎的なお話から、難聴治療の現状、難聴の発症に関係する遺伝子、さらには今後の難聴に対する再生医療の可能性など多岐に渡りましたが、非常にわかりやすく、面白い話を数多く聞くことができました。また、今回は難聴をテーマにした講演であったこともあり、都民講座では初めて要約筆記による通訳サポートを行いました。

特に印象に残ったのは、現在、難聴の治療法として効果を上げている人工臓器のお話でした。図に示しているのは私たちの聴覚器である「耳」の構造になりますが、私たちの耳は主に耳介と外耳道からなる「外耳」、鼓膜と耳小骨からなる「中耳」、半規管、前庭、そして蝸牛からなる「内耳」に分けられています。このうち、音を伝える役割を担っているのが外耳と中耳で、脳に音を伝えるために音刺激を電気信号に変える役割を担っているのが内耳でありますが、外耳・中耳の障害によって音の聞こえが悪くなるのを「伝音難聴」、内耳の障害による難聴を「感音難聴」として分類されています。これまで伝音難聴の患者さんの治療にはこれまで補聴器での対応が一般的でしたが、先生から人工中耳である「埋め込み型骨導補聴器」のお話がありました。先生が埋め込み術を行った患者さんの術後調査からも劇的な治療効果を得られており、さらに最近保険収載されたこともあり多くの患者さんが適応になることが推測されているとのことです。一方、感音難聴の治療に用いられている人工臓器は「人工内耳」であります。人工内耳は機器開発が進み、世界的には17万人以上、日本人でも6万人以上の埋め込み術が施行され、全く音が聞こえない世界からの開放につながる効果が得られているとのお話がありました。今後、さらなる機器開発が進み、講演の後半に話題となった遺伝子診断と組み合わせることにより、多くの難聴患者さんの治療とコミュニケーション障害の改善が期待されます。

講演後は、多くの質問が寄せられ、非常に有意義な講演会となりました。特に、難聴患者さんから自らの体験に基づく具体的な質問・コメントもあり、私たちも遺伝子研究から難聴の治療に役立つ研究を行っていきたいとより深く感じました。

平成26年6月4日

平成26年度 第2回都医学研 都民講座:アンチエイジングと長寿の秘訣

会場:津田ホール

講師:順天堂大学大学院 教授 白澤 卓二

6月4日、「アンチエイジングと長寿の秘訣」と題して、順天堂大学大学院、加齢制御医学講座教授の白澤卓二先生をお迎えして第2回都民講座を開催しました。白澤先生は『100歳までボケない101の方法』『老いに克つ』『免疫力をアップする、塩麹のおかず』『100歳までボケない手指体操』『100歳までサビない生き方』『「砂糖」をやめれば10才若返る!』など100冊を超える著書を執筆されているアンチエイジング研究の第一人者です。

講演はまず、これまで最も長生きしたフランス人女性カルマンさんや、2013年に80歳でエベレスト登頂を果たした三浦雄一郎さんを例に、長寿またはサクセスフルエイジングの重要性についてお話されました。

つづいて、健康で長生きするために重要な食事について、カロリーを70%に抑えたアカゲザルが若々しく生きたという実験例を紹介され、食べ過ぎないようにするにはどうすればよいか、なぜ食べ過ぎるのかなどについて、科学的根拠をまじえてお話されました。また、野菜や果物ジュースを週3回以上とるだけで、アルツハイマー病の発症リスクが75%も低下したという報告を紹介されました。さらに、刺激の多い環境と少ない環境で育てたマウスにおいて神経幹細胞の数が大きく異なったという論文を紹介し、運動と豊かな環境が脳の活性化に大事であることを説明されました。

そして最後に、「アンチエイジングでは、食事、運動、いきがいが大切です」と、非常にわかりやすいメッセージを会場の皆さんに提示されました。

今回は講演内容が長寿の秘訣という高齢化社会における最大関心事であることに加え、白澤先生がマスコミ等でもおなじみの先生ということもあり、多数の聴講応募が寄せられ、会場も満席となりました。講演終了後は大きな拍手に包まれ、聴講された皆様が本当に講演を聞いてよかったという満足感が会場全体に溢れていたように感じられました。本当にすばらしい講演会でした。

平成26年4月24日

平成26年度 第1回都医学研 都民講座:子宮頸がんから身を守るために

会場:東京都医学総合研究所 講堂

講師:三重大学大学院 産科婦人科学教室 准教授 田畑 務

4月24日、三重大学大学院 産科婦人科学教室の田畑務准教授をお迎えし「子宮頸がんから身を守るために」というテーマで都民講座を開催致しました。

はじめに、子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)が原因で発症すること、HPVは約80%の女性が一生に一度は感染するごくありふれたウイルスであること、とのお話がありました。HPV感染から子宮頸がん発症までは、軽度・中等度・高度の異形成という段階を経ますが、定期的に検診を受けていれば早期に発見が可能で、円錐切除術により子宮温存できる場合は後に妊娠・出産も夢ではないそうです。しかし残念ながら、わが国での子宮頸がん検診受診率は20%前後と低いため、田畑先生のグループでは受診率向上のための働きかけもされているとの事でした。

後半はHPVワクチンについてご説明いただきました。現在、日本では2種類のワクチンが認可されており、特に10代での接種が有効との研究結果があります。しかし副反応の報道や、厚生労働省による「積極的に接種の推奨はしない」との方針発表など混乱が続いています。その結果、最近では新たにHPVワクチンを接種する若い女性が激減しているとの事ですが、「接種せずに罹患する場合」と「接種後に副反応が起きる場合」を冷静に判断して欲しいとご説明下さいました。またHPVワクチンは子宮頸がんを完全に予防する訳ではないので、検診との併用が大切であることも強調されておられました。

時にユーモアを交えつつ、子宮頸がんとはどんな病気か、大変わかりやすく教えていただきました。その上で、治療の現状や問題点、予防のためのワクチンや検診の重要性についても丁寧に解説して下さいました。講演後のアンケートでは「内容がわかりやすかった」「ぜひ検診を受けようと思う」という声が多数寄せられ、非常に有意義な講演会となりました。

平成26年4月18日

東京都科学技術週間「Tokyoふしぎ祭(サイ)エンス2014」

会場:日本科学未来館

4月18日の「発明の日」をはさむ一週間を「科学技術週間」として、全国的に科学技術の広報をめざしたイベントが開かれています。東京都では小中学生を対象に「Tokyoふしぎ祭(サイ)エンス」と名付けたイベントを毎年行っています。今年は19、20日の2日間、首都大学東京や都立研究機関などが中心となり、お台場にある「日本科学未来館」で開催されました。東京都医学総合研究所では、「生命の分子を、見てみよう、作ってみよう、調べてみよう」と題し、4つのコーナーを設けました。

「君にはDNAがみえたかな」の実験教室では、タラの白子からDNAを抽出する実験に挑戦しました。最後にアルコールを加えDNAの線維が現れると、子供たちの一瞬ホッとした表情が、次第に得意そうな笑みに変わりました。

「DNAストラップをつくろう」の工作コーナーでは、DNA塩基が対を作って二重らせんを構成する原理を学びました。小さなカラービーズを材料にし、細かい作業に集中して完成させたストラップは、その達成感でひときわキラキラ輝いたはずです。

「君のストレスを測ってみよう」のコーナーでは試験紙を舌下に入れ、唾液中のアミラーゼ量をポータブル測定器で測る実験を行いました。計算ドリル問題を課すことで実際ストレスが増加するようすを実感してもらうはずが、逆に下がる子供もいて、研究員の臨機応変な機知にとんだ話術に、みんな大爆笑に包まれました。

「3Dで実感?タンパク質って何?」のコーナーでは、タンパク質がL?アミノ酸から構成され高次構造をつくることを学習しました。実際、自分の名前をアミノ酸の一文字表記でペプチドに組立てたり、立体メガネでタンパク質の高次構造を観察しました。お土産は医学研の3Dプリンターで作製した労作のカルパインの立体モデルで、大人気のグッズになりました。

これらのイベントはいずれも、1日数回、2日間にわたって行われ、対象の小中学生に簡単に体験して如何に理解してもらうかに工夫が必要です。担当した研究所スタッフによる事前準備、息つく暇のない当日のスケジュールなど、所員の大奮闘となりました。特に協力をいただいた多くの研究生の活躍で、当研究所ブースへ多数の皆さんにご来場いただきました。

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