Oct. 2020 No.039
再生医療プロジェクトリーダー宮岡 佑一郎
サイエンスカフェ オンライン版「PCRとはなにか -その仕組みと発明の過程-」を開催しました。最近、新型コロナウイルス感染の診断法として、PCRという言葉をニュースなどでも耳にするようになりました。私達研究者は毎日のように使うPCRですが、一般の方にその説明が提供される機会は少ないと思います。そこでこのサイエンスカフェでは、PCRがPolymerase Chain Reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)の略であることから話を始め、DNAの特徴、DNA複製の仕組み、好熱性細菌由来DNAポリメラーゼの機能とそのPCRへの応用、PCRによるウイルス感染診断の実際、さらには抗原検査と抗体検査についても紹介しました。標的DNAを2倍、4倍、8倍と増やし、最終的に数百万から数十億倍にまで増幅できる、というPCRの本質の、できるだけ平易な解説を目指しました。また、初代PCRのための好熱性細菌が採取された米国イエローストーン国立公園に、私自身が留学中に訪れたエピソードも紹介でき、感慨深かったです。
オンラインでのイベント実施は、当研究所初の試みでした。しかし、チャットで随時質問を受け付けて、再生医療プロジェクトの高橋研究員と加藤研究員(育休中にもかかわらず)が回答する、講演中に投票形式でクイズを挟む、などのオンラインならではの取り組みも交えることで、好評のうちに終えることができました。
ウイルス感染拡大防止のため、再生医療プロジェクトは5月半ばに全ての実験を停止しました。その中で、自分達にできることは何かを考え、今回のサイエンスカフェ開催に至りました。当日ご参加くださった方々、運営を進めてくださった事務の方々、さらには所内で行われたデモにご参加くださった方々に感謝いたします。今後も長期間にわたり、これまでのような会合を開くことは難しいと思われます。例えば、今年度は連携大学院説明会が中止になりましたが、オンラインであれば開催できるはずです。今回のサイエンスカフェでも、遠方からのご参加があったように、むしろオンラインの方が優れた点もあると思います。今回の私達の経験を、研究所にも還元していきたいです。