2026年4月17日
社会健康医学研究センター 難病ケア看護ユニット松田千春主任研究員らは「筋萎縮性側索硬化症(ALS)における経腸栄養後の体重維持と生命予後の関連」についてJournal of Neurology に発表しました。

ALSは、運動ニューロン障害を主とする進行性の神経難病であり、近年では代謝異常やエネルギー代謝の変化の関与も明らかになりつつあります。体重減少は予後不良因子として知られており、嚥下障害も生じるため胃瘻造設などが検討されますが、経腸栄養導入後において、「カロリー摂取量」と「体重変化」のどちらが生存に重要であるかは明らかではありませんでした。
本研究では、経腸栄養を導入したALS患者121名を対象に、経腸栄養開始時のエネルギー(カロリー)摂取量と、その後の体重変化(BMI変化)、および生存期間との関連を解析しました。
その結果、経腸栄養開始後の体重減少が少ない患者では、生存期間が有意に長いことが示されました(図2)。一方で、栄養開始時のカロリー摂取量そのものは、生存期間と独立した関連を示しませんでした(図2)。また、カロリー摂取量が多いほど体重減少が抑えられる傾向が確認されました(図1)。
本研究により、ALS患者の栄養管理においては、単にカロリー量を増やすことよりも、「体重を維持すること」が生存期間の延長に重要である可能性が示されました。今後は、患者ごとの病状や代謝状態に応じた個別化された栄養管理の重要性が高まると考えられます。
さらに、体重変化は日常的な看護観察の中で継続的に把握可能な指標であり、患者の状態変化を捉えるとともに、治療効果を評価する新たな指標としての活用も期待されます。
本研究は、日本学術振興会(JSPS科研費:23K24656、23K09948)の支援を受けて実施されました。