HOME広報活動刊行物 > April 2013 No.009

研究紹介

薬剤による視神経損傷の軽症化に成功

視覚病態プロジェクトの原田高幸副参事研究員らの研究成果が英国科学雑誌「Cell Death and Differentiation」に発表されました。

視覚病態プロジェクト 副参事研究員原田 高幸

外傷による衝撃などで視神経が損傷しても、眼球内に薬剤を投与することによって、根元の細胞体(網膜神経節細胞)が死ぬのを抑制することに成功しました。視神経や網膜神経節細胞は傷つくと再生することがなく、失明の原因になります。同様に網膜神経節細胞が死ぬことで発症する病気には、国内で最大の失明原因である緑内障があることから、今回の成果は緑内障の治療にもつながると考えています。

私達は以前から網膜神経節細胞に細胞死を誘導する遺伝子として、ASK1とその下流で働くp38に注目してきました。そしてこれらの遺伝子は、視神経の損傷後に過剰に活性化して、細胞体を殺してしまうことを発見しました。そこでASK1がないマウスを人工的に作成して視神経に傷をつけたところ、細胞体が2倍くらい生き残ることがわかりました。さらに視神経に傷をつけてすぐにp38の働きを抑える薬物を目に注射すると、やはり多くの細胞体が生き残ることがわかりました。写真に示すように、薬を注射した目(下段)では網膜が厚いままであることがわかります。視覚病態プロジェクトでは2007年に、日本人に最も多い緑内障である「正常眼圧緑内障」のモデル動物を作製して、研究を継続しています。今後はこうしたモデル動物に対するASK1やp38の阻害剤の治療効果を詳しく検討して、患者さんの治療に役立てていきたいと考えています。

この研究は協力研究員として受け入れた、徳島大学眼科の香留崇先生を中心に行い、その成果は英国科学雑誌「Cell Death and Differentiation」に掲載されました。また、毎日新聞や徳島新聞などでも広く報道されました。

Katome T, Namekata K, Guo X, Semba K, Kittaka D, Kawamura K, Kimura A, Harada C, Ichijo H, Mitamura Y, Harada T.

Inhibition of ASK1-p38 pathway prevents neural cell death following optic nerve injury.

図
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