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開催報告

第4回 都医学研 都民講座 (2019年9月27日開催)
自閉症の理解と回復を目指して

シナプス可塑性プロジェクトリーダー山形 要人

左:山形要人 研究員、右:加藤進昌 先生

「自閉症(自閉症スペクトラム障害、ASD)」は、他の人とうまくコミュニケーションがとれない、共感できない、興味のかたより、感覚過敏(あるいは鈍麻)などの特徴があります。ASDは、知的発達の遅れを伴う「カナー型自閉症」から知的障害の無い「アスペルガー症候群」までを包む、連続した疾患と考えられているので、その特性の強さに応じた対応が必要です。本都民講座は、両タイプのASDを取り上げ、その理解を深めて頂くとともに、研究の最前線を知って頂くために企画しました。今回は、外部講師として昭和大学発達障害医療研究所所長の加藤進昌先生をお迎えしました。

まず、私が「知的障害を伴う自閉症のしくみを探る」と題して「カナー型」についてお話ししました。遺伝的要素が強く、障害の程度も重いため、根本的な介入が求められていますが、現在のところ、まだ治療薬はありません。そこで、その発症のしくみを探るため、知的障害と自閉症を起こす病気の原因遺伝子を壊したマウスを作り、シナプス(神経細胞の接着部)が異常になることやその仕組みを明らかにし、それに基づく治療薬の開発を進めていることをお話ししました。

続いて、加藤先生が、「アスペルガー症候群とは何か -脳内メカニズムの解明からリハビリテーションまで-」と題して講演されました。加藤先生は、発達障害外来で診療を行う傍ら、アスペルガー症候群では会話と視線が連動しないことや、人工知能を用いてMRI画像からASDを判別する技術を発表されました。また、アスペルガーの人たちは、その特性ゆえに社会で生きづらさを抱えています。そこで、ASDを対象としたデイケアで、コミュニケーションスキルを訓練したところ、中断率が1割以下と低く、無職の人の55%が3年以内に就職したなど、大きな成果が上がっていることが示されました。このプログラムは新たに診療報酬化もされています。

講演後のアンケートでは、「もう少し長くやってほしい」「研究が進んでいるので希望を持ちたい」「デイケアの取り組みが全国に広がるとよい」といった御意見を数多く頂きました。

最後に、ASDの研究は着実に進展しており、特性の強さに応じた治療薬やプログラムの開発が、当事者の皆さんの社会参加やコミュニケ-ションの改善に役立つことを願ってやみません。

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