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開催報告

第5回 都医学研 都民講座 (2019年10月10日開催)
睡眠と心の関係 −豊かな生活のために−

睡眠プロジェクトリーダー本多 真

左から本多研究員、内村先生、楯林研究員

本年度第5回都民講座は睡眠がテーマでした。都民講座をより多くの方に知っていただく工夫の一環として、はじめて虎の門の会場と16:00-18:00の時間帯設定を行いました。

久留米大学神経精神医学講座の内村直尚先生をお招きし、都医学研からうつ病プロジェクトの楯林リーダー、睡眠プロジェクトの本多がそれぞれの立場から講演しました。

まず「眠気のしくみとその対処法」と題し、本多が講演しました。睡眠調節の基本法則(体内時計と恒常性維持)や脳幹部による睡眠覚醒の調節のメカニズムを紹介し、心身と睡眠の調和により”睡眠力”を高めることがよい眠りにつながることをお示ししました。また眠気はイライラや意欲低下を起こし、作業効率低下など日常生活の支障が大きいことを説明しました。次に「ストレスと睡眠障害」と題して楯林研究員から講演がありました。不眠で「眠ろうと焦る」こと自体がストレスとなり不眠恐怖症をきたす悪循環の例が紹介されました。またうつ病は睡眠や食欲という基本的欲求の障害に加え、気分・意欲・思考力といった高次脳機能を含む脳全体(脳幹と大脳皮質)が障害されること、抗うつ薬の作用点が覚醒神経系と重なること、睡眠覚醒を整え脳の機能を保つことの重要性が示されました。最後に「睡眠はこころとからだのバロメーター -睡眠を制する者が人生を制する-」と題して内村先生にご講演いただきました。睡眠不足が肥満や糖尿病のリスクとなり、うつ病や認知症のリスクにもなることを説明され、さらに社会的時差ボケの例として休日朝寝坊をすると週前半のパーフォーマンスが落ちる知見が示されました。ぐっすり眠るための方法が紹介され、昼食後の仮眠の方法とその効果が説明されました。福岡市のpower napプロジェクト(昼寝で活力)活動の紹介から、「働き方改革」は「眠り方改革」であると指摘され、よい睡眠が健康寿命を延ばす鍵である、と力強く述べられました。

講演後には、夜間頻尿への対処、発達障害児の睡眠障害対策など、熱心な質疑が行われました。アンケートでも睡眠が脳や体と深い関係があることを改めて実感したといったご意見を多くいただきました。この講演会が参加された方々の睡眠・日常生活の改善の実践に結び付く機会となれば幸いです。

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