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平成27年度 医学研セミナー

私の難病研究と医療貢献 − アミロイドーシスを中心に −

− この都医学研セミナーは終了しました。 −

演者 池田 修一(信州大学医学部 内科学第三講座 教授)
会場 東京都医学総合研究所 2階講堂
日時 平成28年1月14日(木) 16:30~17:30
世話人 長谷川 成人 参事研究員(認知症プロジェクトリーダー) 
参加自由 詳細は下記問合せ先まで
お問い合わせ 研究推進課 普及広報係
電話(03)5316-3109

講演要旨

私も公的機関での医師として、また研究者として、残りの任期が3年余となりました。振り返ってみると1978年の秋に信州大学医学部附属病院の病棟で、新人医師として受け持った患者が家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)の40歳代前半の男性でした。周期的に数日間出現する激しい嘔吐発作、下肢の疼痛と足底の大きな火傷をみて、こんな悲惨な病気がこの世の中にあるのかな、と感じました。当時、遺伝病は治らない、アミロイドーシスは不治の病との固定概念が支配的で、こうした患者が入院している病棟は雰囲気も暗く、多くの医師は「FAP患者の受け持ちにはなりたくない」が本音でした。私は偶然にこの患者さんの剖検をとったことから、以後アミロイドーシス研究に自ら入り込みました。研究といっても当時の信州大学ではFAPの確定診断を下すことが精一杯の診療レベルでした。一方、1984年には宮崎医科大学からFAPの血清診断法が、また九州大学から遺伝子診断法が発表されて、医学界に衝撃が走りましたが、われわれ信州大学グループは蚊帳の外でした。本格的なアミロイドーシス研究を学びたくて、1986年にUCSDのGeorge G. Glenner博士の研究室の門を叩きました。ここではアミロイドーシス即ちAlzheimer’s cerebrovascular amyloidosisであり、Glenner博士からAmyloidologyの基本を学びました。1989年秋に帰国後、FAPの簡便な遺伝子診断法の導入、生体肝移植の実施等、数々の挑戦をしてきました。今はFAPに代表される全身性アミロイドーシスは治療可能な疾患であり、根治療法後は、体内へ沈着していたアミロイドが退縮していく現象 (Dynamic turn-over of amyloid fibril protein) がヒトで証明されました。“解らない”、“治らない”からこそ、一生を懸けて研究する意義があるのではないでしょうか。

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