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平成27年度 医学研セミナー

がん増悪化情報伝達系へのEP4プロスタノイド受容体の役割

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演者 藤野 裕道(千葉大学大学院薬学研究院 薬効薬理学研究室 准教授)
会場 東京都医学総合研究所 2BC会議室
日時 平成27年10月20日(火) 16:00~17:30
世話人 小野 弥子 研究員(カルパインプロジェクト) 
参加自由 詳細は下記問合せ先まで
お問い合わせ 研究推進課 普及広報係
電話(03)5316-3109

講演要旨

プロスタノイドは、アラキドン酸からシクロオキシゲナーゼ(COX)の作用により生成する生理活性物質の総称であり、プロスタグランジンE2(PGE2)など、主に5つのプロスタノイドの存在が知られている。炎症反応、アレルギー反応、分娩、そして癌など様々な生体反応に関与するプロスタノイドは、例えばPGE2はEPと呼ばれるGタンパク質共役型受容体を介して作用する。EP受容体はEP1からEP4までの4つのサブタイプから構成されるが、そのなかでEP4受容体を中心とした癌関連情報伝達系の解明について、この十数年程で得られた研究成果を紹介したい。まずHEK293細胞に安定発現させたモデルシステムを用いた系において、癌化や分化に関与していると考えられているβカテニン情報伝達系を、EP4受容体はphosphatidylinositol 3-kinase (PI3キナーゼ)を主に介して活性化し、その系によりPGE2合成酵素発現も誘導する可能性を見いだした。

またPI3キナーゼを介した系は、百日咳毒素感受性であることから、Gs型タンパク質の他に、Gi型タンパク質もEP4受容体に共役していることも見いだした。さらにEP4受容体の生理的あるいは病態生理的作用を解明するため、ヒト結腸癌細胞株HCA-7細胞を用いた系で、EP4受容体刺激が、Gi/PI3キナーゼ系の活性化により、COX-2発現を誘導することを明らかにした。興味深いことに、癌細胞密度が高くなるに従い、低酸素状態に応答して転写因子として機能する低酸素誘導因子1α(HIF-1α)が増加し、その結果EP4受容体発現およびEP4受容体活性化由来COX-2発現が減少することも見いだした。HIF-1αは細胞密度により発現が変動することから、EP4受容体の発現もまた、癌細胞密度により変動することが考えられた。すなわちプロスタノイド受容体のなかでも特にEP4受容体は、その情報伝達系だけではなく、その発現量の増減も、癌制御に関して重要な役割を持つ受容体である可能性が強く示唆された。

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