HOME広報活動都医学研セミナー

平成27年度 医学研セミナー

iPS細胞のゲノム編集による疾患研究

− この都医学研セミナーは終了しました。 −

演者 宮岡 佑一郎(Gladstone Institutes Postdoctoral Fellow)
会場 東京都医学総合研究所 2階講堂
日時 平成27年11月18日(水)16:00〜17:00
世話人 田中 啓二 所長
参加自由 詳細は下記問合せ先まで
お問い合わせ 研究推進課 普及広報係
電話(03)5316-3109

講演要旨

いかなる細胞種にも分化することができるヒトiPS細胞は、疾患モデルや細胞移植治療などへの応用が期待されています。発表者は、近年急速な発展を遂げているゲノム編集技術を、ヒトiPS細胞に用いることにより、iPS細胞の応用の可能性をさらに広げようとしています。

従来のヒトiPS細胞を使った疾患モデルは、患者由来iPS細胞を健常者由来iPS細胞と比較してきましたが、ヒトは個人で遺伝的背景が異なるため、異なるiPS細胞株間の表現型の比較は 非常に困難でした。ゲノム編集技術は、健常者由来iPS細胞に疾患の原因となる変異を導入し、同一の遺伝的背景のもとで変異の影響のみを解析することを可能にしました。発表者は、点変異を導入したiPS細胞を効率よく単離する手法を開発しました(Miyaoka, Nature Methods 2014)。この手法により、拡張型心筋症の原因となる、心臓特異的なスプライシング因子RBM20の点変異を持つiPS細胞を樹立し、拡張型心筋症の発症機序を探っています。

細胞移植治療もiPS細胞の応用の大きな柱です。iPS細胞による自家移植治療は、免疫拒絶といった問題を回避できる一方、遺伝性疾患の患者の場合はそのiPS細胞も疾患の原因となる遺伝的背景を保持するため、根本治療とはなりません。ゲノム編集技術は、患者由来iPS細胞の変異を正常な配列へと修正し移植に用いるという、いわば究極の自家移植治療を原理的には可能にします。しかし、その実現のためにはゲノムDNAに不必要な変異を導入しない、精度の高いゲノム編集技術が必要となります。発表者は、遺伝性肝疾患であるウィルソン病患者由来のiPS細胞において、その原因となる銅トランスポーターであるATP7B R778L変異を修正し、その精度を評価することで、治療に使用可能なゲノム編集の条件を探索しようとしています。

ページの先頭へ