HOME広報活動都医学研セミナー

平成27年度 医学研セミナー

マウス大脳皮質の神経回路再編成とグリア

− この都医学研セミナーは終了しました。 −

演者 鍋倉 淳一(生理学研究所 副所長)
会場 東京都医学総合研究所 講堂
日時 平成27年4月16日(木)16:00
世話人 齊藤 実 参事研究員(学習記憶プロジェクト)
参加自由 詳細は下記問合せ先まで
お問い合わせ 研究推進課 普及広報係
電話(03)5316-3109

講演要旨

発達期や障害後の脳機能の長期変化の背景にある神経回路再編に係わるメカニズムとして、近年、各種グリア細胞に注目が集まっている。しかし、これまでの多くのグリア細胞の研究はin vitro標本を用いた結果から生体内における役割を予測してきた。グリア細胞の生体内における動態・機能を検討するために、マウスの大脳皮質において神経細胞とグリア細胞の相互作用の観察を2光子励起顕微鏡を用いて行った。脳内免疫細胞であるミクログリア細胞は正常脳においてはシナプスに約1時間毎に5分間接触・監視している。脳梗塞周囲領域では、接触時間の大幅な延長がみられ、しばしば接触後にはシナプス構造の消失が観察される。ミクログリアは、正常時においてシナプスを定期的に監視し、障害回路においてはシナプスの除去など神経回路の可塑的変化に重要な役割を果たしていることが明らかとなってきた 。一方で、各種障害大脳皮質では、細胞内Ca2+動態を指標としたアストロサイト活動の亢進が見られる。慢性疼痛モデルマウスの大脳皮質体性感覚野において、アストロサイトの活性化によりシナプス新生が亢進し、神経回路の再編の結果、触覚などの軽度の末梢刺激によっても過剰に反応する神経回路が構築され、痛覚過敏の一因であることが判明した。このように、多光子励起顕微鏡の生体応用により、個体行動、活動などの細胞機能とシナプスなどの微細構造を同じ動物で検証できるようになり、分子―細胞―個体の階層を超えた理解が大きく進みつつある。

ページの先頭へ