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平成27年度 医学研セミナー

小脳の時間情報

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演者 田中 真樹(北海道大学医学部・神経生理学分野 教授)
会場 東京都医学総合研究所 2階講堂
日時 平成27年5月29日(金) 16:00 ~ 17:00
世話人 筧 慎治 副参事研究員(運動障害プロジェクトリーダー)
参加自由 詳細は下記問合せ先まで
お問い合わせ 研究推進課 普及広報係
電話(03)5316-3109

講演要旨

時間情報は日常生活を送る上で不可欠であり、処理する時間の長短によって視床下部、大脳基底核、小脳などの異なった皮質下領域が関与する。物質発現の周期で概日リズムを作る視床下部と異なり、数十秒から数百ミリ秒の時間情報は大脳-基底核ループや大脳-小脳ループなどによって神経性に生成されると考えられているが、そもそも時間がどのような神経活動によって脳内で表現されているかについてさえ定説がない。私たちは時間情報が必要となる様々な行動課題をサルに訓練し、その際の脳各部の神経活動を調べることで、この問題に取り組んでいる。本講演では、その中でもとくに小脳に関連した研究について紹介する。

実験では、タイミング予測を要する「欠落オドボール課題」を用いた。この課題では、数百ミリ秒の一定間隔で繰り返し提示される視聴覚刺激の不意の欠落を検出する。そのためには試行ごとに異なる刺激間隔を学習し、次の刺激タイミングを予測する必要がある。前頭・頭頂連合野との強い結合が知られている小脳歯状核では、多くのニューロンが刺激をくり返すことで感覚応答を徐々に増大させ、その応答ゲインは刺激間隔に比例していた。このことは、直前の刺激からの経過時間がニューロンの発火率の変化として小脳で符号化されていることを示唆する。同様の課題を用いた脊髄小脳変性症(SCA6)の行動解析や、心理物理実験の結果と合わせ、小脳による時間表現とタイミング予測の脳内メカニズムについて考察する。

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