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平成27年度 医学研セミナー

糖尿病性神経障害の成因 Up to Date

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演者 水上 浩哉(弘前大学大学院医学研究科 分子病態病理学講座 教授)
会場 東京都医学総合研究所 2階講堂
日時 平成27年10月23日(金) 16:00~17:00
世話人 三五 一憲 副参事研究員(糖尿病性神経障害プロジェクトリーダー)
参加自由 詳細は下記問合せ先まで
お問い合わせ 研究推進課 普及広報係
電話(03)5316-3109

講演要旨

糖尿病性神経障害(DPN)の頻度は高く、糖尿病診断時に電気生理学的検査においてほぼ100%の患者で末梢神経の異常をみる。その症状は四肢遠位対称性のしびれ、痛み、感覚鈍麻がある。特に有痛性神経障害は患者に睡眠障害をもたらし、QOLを著しく下げる。また、自律神経障害を伴うと、不整脈などから高い致死率を示すこととなる。

DPNの成因には高血糖からの代謝障害が重要である。持続的高血糖によりポリオール経路の活性化、最終糖化産物の沈着、PKCの活性化異常、酸化ストレスの亢進、神経栄養因子の発現低下などがこれまでに解明されている。これら因子は相互に関係しながらDPNを発症、進展させていると考えられている。これら機序のうち、本邦においてはDPNに対しポリオール経路の律速酵素であるアルドース還元酵素の阻害薬(ARI)のみが臨床応用されている。しかしながら、ARIは血糖コントロール不良症例や進行例ではその効果は低いことが知られている。従って、DPNの根治薬は未だ確立されておらず、新たな治療標的の探索が急務となっている。

1型糖尿病モデルマウスの坐骨神経を用いて、網羅的メタボローム解析を行ったところ、糖尿病坐骨神経ではARの存在の有無にかかわらず、グルコサミン類似物質が著明に沈着していた。正常マウスにグルコサミンを投与することによりDPN類似の末梢神経障害が惹起されたことから、グルコサミン代謝の制御が新たなDPNの治療標的となる可能性がある。本セミナーではグルコサミン代謝を含めた最近のDPNの成因解明の進歩について概説してみたいと思う。

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