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April 2017 No.025
こころの健康プロジェクト プロジェクトリーダー西田 淳志
12月9日(金)、日経ホールにおいて「思春期・青年期のこころの健康と成長を支えるもの」と題し、総合研究大学院大学学長の長谷川眞理子先生、北海道医療大学教授の向谷地生良先生を講師にお迎えして、第6回都医学研都民講座を行いました。
最初に長谷川先生から 「思春期というライフステージの進化的意義」 と題して、進化生物学の観点からみた思春期の意義を概説していただきました。思春期は、「育てられる存在」 から 「育てる存在」 への転換期であり、他の動物に比べて期間が著しく長いこと、このライフステージがヒト固有のものであることなどを説明していただきました。次に、私が、「思春期のこころの健康を支えるもの:東京ティーンコホー ト研究から」と題して講演をさせていただきました。東京都に暮らす思春期の子ども3000人以上を追跡対象とするコホート研究(東京ティーンコホートプロジェクト)から得られた知見として、こども本人の経験のみならず、親を含む周囲の大人が人に助けを求めたり、人を助けたりするところを見聞きすることによって、こどもたちの精神的な健康や豊かさが支えられることなどを報告しました。次に、向谷地先生が、「思春期・青年期の回復力を支える仲間の力、自分を取り戻す言葉との出会い」と題して 「当事者研究」 の経験を踏まえたお話をいただきました。当事者研究というものは、同じ苦労を経験している仲間同士が対話を重ねて、自分の抱えている苦労について理解を深め、自分自身の助け方を見出す実践的研究です。多くの人が思春期に経験する心の危機や苦労も、こうした当事者研究のアプローチによって、その後の人生の大事な糧とするこができることなど、を日頃の実践に基づいて報告していただきました。最後に、当研究所の新井誠研究員が 「思春期の脳と身体の健康を支えるもの:統合失調症の新たな病態仮説から」と題して講演を行いました。糖化ストレスは、動脈硬化や糖尿病などの身体疾患だけでなく、統合失調症などの精神疾患にも関わりがあり、その解毒にピリドキサミンが関与する可能性が示唆されている。また、生活行動や食生活などの改善が脳と身体の健康の支えとなりうるとの報告でした。4人の演者による思春期・青年期に対する幅広い多様性のある講演に、 「もっ と詳しくお話を聴きたい。」 との感想が多く寄せられるなど大変盛況に終わりました。