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開催報告

第8回都医学研都民講座(平成29年2月16日実施)
「現代社会と睡眠障害 ~よい眠りをとるために~」

睡眠プロジェクト プロジェクトリーダー本多 真

第8回都医学研都民講座

平成29年2月16日、東京都庁大会議室にて平成28年度第8回都医学研都民講座を開催いたしました。平日午後にも関わらず、350名を超えるたくさんの方においでいただき、ありがとうございました。

はじめに 「ナゼ眠るのか、ナゼ眠らなくてはならないのか―睡眠と健康の深~い関係―」 と題して、国立精神・神経医療研究センターの三島和夫先生からご講演がありました。睡眠障害は個人の問題であると同時に社会的視点が必要であることをお話され、個人の睡眠習慣の問題として睡眠不足と交代勤務をとりあげられました。睡眠不足による健康に対する様々な悪影響があること、また交代勤務は長期的な発がんリスクであり、社会の問題として検討が必要であることなどお話しいただきました。一方で交代勤務を行う工夫なども説明されました。ご自身の研究からは、一日平均7.3時間睡眠をとる健康な若者を、一日12時間ずつ暗室で過ごさせると、充足睡眠時間は平均8.4時間で、気づかない間に1.1時間もの潜在的な睡眠不足が存在することを指摘されました。睡眠の個人差を社会問題として取り組む例として、思春期青年期に体質として夜型化するのに合わせて、学校の始業を午前10時にする英国のパイロット研究も紹介されました。

次に私から 「居眠りするにはわけがある」 と題して、眠気が生じる仕組みとよい眠りの工夫の話をさせていただきました。睡眠と覚醒の切替えに必要な体内時計がある視床下部には、リズムや体温調節、食事やストレス・自律神経など、多彩な生体情報が集約されています。それらを総合的に整えることが、睡眠力を高めることにつながることを説明しました。また高齢者での昼寝の効用も紹介しました。最後に睡眠時無呼吸症候群やナルコレプシーなどの、病的な眠気が存在するので、居眠りを怠け者とみるのではなく、早期発見・早期治療への協力を呼びかけました。

講演後には時間薬理学の応用や、乳幼児期の睡眠覚醒リズム形成など、フロアから専門的な質疑もあり、聴講された方々の関心の高さを実感しました。この講座がきっかけとなり、自分の身体の声に耳を傾けること、そしてよい眠りの工夫をし、皆様のこころの健康増進の一助となれば幸いです。

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