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April 2019 No.033
脳卒中ルネサンスプロジェクトリーダー七田 崇
平成31年1月17日に一橋講堂において第7回都医学研都民講座「脳卒中の世紀」を開催致しました。たくさんの方がお集まり下さり、熱心に聴講して頂いたことを心より御礼申し上げます。
我が国は高齢化社会を迎えて久しく、2020年には脳卒中患者は300万人に達すると予想されています。脳卒中は日頃の生活習慣を見直すことで発症を予防することができる病気であり、脳卒中に対して何らかの対策を打つべき時代が到来している・・・すなわち21世紀は人類が脳卒中を克服する100年になるのではないか、との期待を込め、「脳卒中の世紀」と名前を付けました。
会場ではまず、「燃えさかる!?脳卒中後の炎症の正体」と題し、短い時間ではありましたが、傷ついた脳内でどのように炎症が起こり治っていくのかを簡単にお話させて頂きました。炎症によって傷ついた脳が腫れると、神経症状が悪化します。血液の細胞がどのような役割を持ち、傷ついた脳の中に呼び込まれて炎症を起こすのか、これは脳卒中に適した治療法を考える上でも根幹をなす概念となります。炎症をコントロールすることによって、脳卒中の新たな治療が開発できると考えられています。
続いて九州大学医学部・病態機能内科学教授の北園孝成先生をお招きして、「脳卒中にならないための健康管理」についてご講演頂きました。日本脳卒中協会が提言している脳卒中予防十箇条に基づき、主に高血圧、糖尿病、脂質異常症、不整脈(心房細動)を取り上げ、これらがどのように脳卒中の発症に関係しているかを分かりやすく解説されました。特に脳卒中の発症リスクが高い人の特徴を、現代社会を反映した具体例を交えてお話しされましたので、生活習慣の中で実際にどのようなことが脳卒中の発症に関係しているのかが明確になりました。
ではどのように生活を変えれば脳卒中を減らすことができるのか。急に生活を変えるのは難しいことではありますが、親から子供・孫に至るまで家庭内で世代を超えて、脳卒中の発症リスクを減らすような生活習慣を受け継いでいくことが重要とのお考えを述べられました。実際に明日からでも実践できるような脳卒中予防のコツが示されましたが、これらは現役医師であっても啓蒙されるような洗練された内容でありました。
「脳卒中の世紀」はまだ始まったばかりですが、これからも脳卒中が十分に予防され、治療されるような時代が到来することを願ってやみません。
会場・質疑応答の様子(舞台 左:北園孝成先生、右:七田崇研究員)