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特集

社会健康医学研究センター紹介

社会健康医学研究センター長西田 淳志

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今日、我が国では100歳を超えてもなお元気な方々は珍しくなく、「100歳時代の到来」などといった言葉も巷ではよく聞かれるようになっています。こうした長い人生を、より健康で精神的にも豊かに生きるためにはどのようなことが重要となってくるのでしょうか?超高齢社会における疾病問題は、主にがんや循環器疾患、認知症や精神疾患に関するものであり、これらの疾患はゲノムを含むヒトの個体特性とともに、長いライフコース(人生)の途上で遭遇する様々な「社会環境」の影響を受けて発生します。効果的な予防戦略を具体化するためには、ライフコースを連続的にとらえ、病気になる前のライフステージにおけるストレスや生活行動(生活習慣)、社会環境などに対しても先制的に対策を打っていくことが不可欠となります。そのためには大規模な一般人口集団を発達段階から長期にわたって追跡するコホート研究を継続的に展開していくことが重要となります。一方、地域医療・介護の体制整備の進展にともない、人々が疾患や障害を経験したとしても、住み慣れた地域社会で生活を続けることが可能となりつつあります。認知症や精神疾患、難病を経験している人々への「地域包括ケア」の進化・発展と、QOL を高めていくためのケアプログラムやサポートテクノロジーの開発・普及は、都政における重要な施策課題になっています。

社会健康医学研究センターは、こうした継続性が重要となる社会医学系研究を推進するための核となる組織として2020年4月に新設されました。所内の研究プロジェクトやゲノム医学研究センターと緊密な連携をはかりながら、社会医学と生命科学の融合による革新的研究成果、すなわち“都医学研ならではの研究成果”の創出も目指します。また、難病ケアや認知症ケアなど都政に直結する重要課題に積極的に取り組み、その研究成果を都民のみなさまにできる限りタイムリーに還元していくことを使命としています。さらに保健・医療・福祉施策を支える臨床研究や疫学研究の設計支援、基礎生命科学の生物統計コンサルティングなどを通じて質の高い研究の実現をサポートさせていただきます。

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