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2019年度 医学研セミナー

メルケル細胞ポリオーマウイルス;
ヒトメルケル細胞癌を引き起こす7番目のヒト腫瘍ウイルス

− この都医学研セミナーは終了しました。 −

演者 習田 昌裕 MASAHIRO SHUDA, Ph. D
University of Pittsburgh
Medical Center Hillman Cancer Center
Cancer Virology Program(Assistant Professor)
会場 東京都医学総合研究所 2BC会議室
日時 2019年12月24日(火) 16:00〜
世話人 安井 文彦
感染制御プロジェクトリーダー
参加自由 詳細は下記問合せ先まで
お問い合わせ 研究推進課 普及広報係
電話 03-5316-3109

講演要旨

メルケル細胞ポリオーマウイルス(MCV or MCPyV)は、2008年に希な皮膚がんであるヒトメルケル細胞がん(MCC)より同定されたポリオーマウイルスである。 MCVはSV40と同族のウイルスで、SV40において形質転換能が知られる腫瘍(T)抗原遺伝子をコードする。MCVは、腫瘍ゲノムにクローン様に挿入され、T抗原遺伝子がMCC組織で恒常的に発現されている事が発見された。我々はMCVがクローン様に挿入されたMCC患者由来の細胞株を樹立し、それら細胞株を用いて、shRNAによりT抗原遺伝子の発現を阻害した結果、全てのウイルス感染細胞株で細胞増職能が完全に失われた。これはMCCがT抗原遺伝子の発現に依存して増植し、MCVがMCCのがん原生因子である事を示唆する。しかしながら、MCVの感染によりがん化したMCCの起源細胞は明らかではない。

我々は、角化細胞の存在下でMCCの細胞形質がT抗原遺伝子発現の阻害により神経様の細胞形質に変化する事を見出した。この形質変化は幹細胞因子Sox2とメルケル細胞分化因子Atoh1の阻害を介して起こる事を明らかにした。更にSox2の発現がMCC細胞増殖に必須ながん遺伝子である事を発見した。本結果は、MCVのT抗原の発現が宿主遺伝子Sox2とAtoh1の発現を活性化する事でメルケル細胞様の腫瘍形質の維持に寄与する事を示唆し、MCVが神経分化能を持つ細胞に感染し、Sox2-Atoh1経路の活性化によって、発がん及びメルケル細胞形質の発現に寄与している可能性が示された。

参考文献

  1. Harold A, Amako Y, Hachisuka J, Bai Y, Li MY, Kubat L, Gravemeyer J, Franks J, Gibbs JR, Park HJ, Ezhkova E, Becker JC, Shuda M. Conversion of Sox2-Dependent Merkel Cell Carcinoma to a Differentiated Neuron-like Phenotype by T Antigen Inhibition. Proc Natl Acad Sci U S A. 2019; 116(40):20104-20114
  2. Shuda M, Velásquez C, Cheng E, Cordek DG, Kwun HJ, Chang Y, Moore PS. CDK1 substitutes for mTOR kinase to activate mitotic cap-dependent protein translation. Proc Natl Acad Sci U S A. 2015 May 12;112(19):5875-82.
  3. Shuda M, Chang Y, Moore PS.Merkel cell polyomavirus-positive Merkel cell carcinoma requires viral small T-antigen for cell proliferation. J Invest Dermatol. 2014 May;134(5):1479-1481.
  4. Shuda M, Kwun HJ, Feng H, Chang Y, Moore PS.Human Merkel cell polyomavirus small T antigen is an oncoprotein targeting the 4E-BP1 translation regulator. J Clin Invest. 2011 Sep;121(9):3623-34.
  5. Feng H, Shuda M, Chang Y, Moore PS. Clonal integration of a polyomavirus in human Merkel cell carcinoma. Science. 2008;319(5866):1096-100.
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