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開催報告

第6回都民講座:「知っていますか?第2の認知症『レビー小体型認知症』」

東京医学総合研究所は都民の皆様向けに年8回ほど講演(都民講座)を行い、当研究所の研究成果の一端や関連する最新情報などを分かりやすくお伝えしています。

講師:クリニック医庵 センター南小阪 憲司 先生

小阪 憲司 先生

認知症の原因となる脳疾患は多数あり、発症年齢によってそれぞれの割合は若干異なりますが、最も多いのはアルツハイマー病であり、(認知症の大半を占める高齢者では)次に多いのがレビー小体型認知症(Dementia with Lewy Bodies: DLB)、そして血管性認知症の順となります。このようにDLBは頻度の高い疾患でありますが、まだ十分に知られておらず、その上、診断が難しいため誤診されているケースも少なくありません。一方、DLBは初期から認知症の行動心理症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia: BPSD)を起こしやすく、かつ薬剤の選択も難しいことから介護が大変で、患者・家族のQOLが早い段階から低下します。

DLBは脳病理学的に言うとアルツハイマー病とパーキンソン病とが合併したような疾患です。パーキンソン病では、特徴的な病理所見であるレビー小体が脳幹に多発し、大脳皮質にはほとんど見られないのに対し、DLBではレビー小体が大脳皮質に多発します。DLBの最初の症例報告は1976年に本講座の講師である小阪先生によりなされました。その後、約10年間は欧米ではあまり注目されませんでしたが、その主な理由はDLB例の多くにアルツハイマー病変が合併するためで、当時はDLBをアルツハイマー病と診断していました。しかし、徐々にDLBを独立した疾患として扱うことの重要性が認識されるようになり、1995年には世界の研究者が集まって第一回国際ワークショップを開催、「DLB」という名称を採用するとともに、翌1996年にDLB診断基準が発表されました。現在は、2005年に出された改訂版診断基準が使用されています。

DLBは、特に早い段階では記憶障害が明らかでないことが多い一方、認知機能の(日内、あるいは数日単位での)変動や、うつ症状、幻視、妄想の頻度が高い点が特徴的です。薬物治療としては、本邦で実施された治験によりアリセプト®が有効であることが示されています。なお、BPSDに対して用いられることがある抗精神病薬に過敏に反応することから、投与量の調節に特別な配慮が必要です。介護に当たっては、まずDLBの症状の特徴をよく把握した上で接することが大事であり、たとえば幻視の訴えには、本人にとっては「本当に見えている」ということを理解して、一方的に否定したりせず、話をよく聞き受容し、安心を与えるように対応しなくてはいけません。

他の認知症疾患も同様でありますが、とりわけDLBは病気についての啓発活動や介護者同士の情報交換が重要です。医療関係者も一般の人もDLBのことを知り、発症早期から適切な対応をとらなくてはなりません。小阪先生は単にDLBの発見者というにとどまらず、2008年にはDLBの家族を支える会を発足させて、現在も活発な活動を続けておられる先駆者でもあります。

認知症・高次脳機能研究分野 秋山 治彦

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