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開催報告

第17回都医学研国際シンポジウム (平成29年8月24日実施)

International Home Mechanical Ventilation Conference

難病ケア看護プロジェクトリーダー中山 優季

難病法が施行され、新たな難病も増えています。難病を取り巻く情勢は確実に変化している中で、初めて難病ケア看護プロジェクトが主催する国際シンポジウムでは、テーマを「在宅人工呼吸療法」にすることとしました。

我が国の在宅人工呼吸療法の歴史は、1970年代、都医学研に統合前の神経科学総合研究所と府中キャンパスから始まったといっても過言ではありません。その歴史を紐解き、これからの在宅人工呼吸療法支援を考える場になることを願って、海外招聘者3名、日本国内から5名のシンポジストの講演を企画しました。

1970年代、初めての在宅人工呼吸療法は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)つまり、神経難病の方でした。この実践は、治らない病とともに生き抜くために、社会で支える仕組みとして発展を遂げています(難病対策要綱、難病法)。それを築き上げた根幹には、「当事者とともに」歩んできた姿勢があります。そこで、本国際シンポジウムでも、4人の在宅人工呼吸療法の当事者とご遺族を迎え、それぞれのスピーチを通して、いきいきと活躍をされる生き様を魅せてくださいました。

実は、在宅人工呼吸療法、特に気管切開を伴う方法については、日本国内また世界的にも、様々な意見があり、一定の見解はありません。日本では、ALS療養者の30%位がこの療法を選択しているとされていますが、諸外国では、0~数%とも言われ、その実施率の差には、医療経済、文化・価値観など多くの要因があるといわれています。

講演の中で、Death with Dignity(尊厳ある死)を選択するALS療養者が、がん患者よりも多いことにふれられたBenditt先生は 、「日本の素晴らしいケアシステムがあれば、死を選ぶ必要がないのかもしれない」と感想を仰っていました。

Mckim先生からも、「カナダでは、人工呼吸器は医療保険対象になるが、選択する人は少ない。介護に対する保障がないからかもしれない」と意見をされていました。

在宅人工呼吸療法を選択した場合の経済的な負担や家族にかかる重圧、そういったものから解放され、その人自身の生き方を決めることができる社会となることが求められていることを強く感じました。

それは、ALS当事者である嶋守様からの、「呼吸器を装着しても充実した人生を送れる。それは、どの程度支援が得られるかに比例するといっても、過言ではありません。生き方に対する患者の考え方は刻一刻と変化します。ぜひ患者に寄り添って力になってください。」というメッセージに凝縮されているようにも思えます。

難病の進行そのものを止めることは、まだできませんが、進行を上回る支援があれば、充実した人生を送れます。在宅人工呼吸療法は、そのための一つの手段であることを、参加くださった116名の方で共有できたことを大変嬉しく思います。

最後に「いつもの国際シンポジウムと趣は違ったけれど、こういうのもいいね」と仰ってくださいました副所長の言葉に代表されるように「異色」の国際シンポジウムの開催を実現してくださった研究所をはじめ、ご尽力くださったすべての方々に感謝を申し上げます。

第17回都医学研国際シンポジウム 写真
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