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特集

クラリベイト引用栄誉賞(Citation Laureates)2022の受賞について

認知症プロジェクトリーダー長谷川 成人

2022年9月21日(水)に、クラリベイト引用栄誉賞をペンシルバニア大学のVirginia M. Lee先生と一緒に受賞致しました。受賞理由は「筋萎縮性側索硬化症(ALS)および前頭側頭葉変性症(FTLD)の病理学的特徴であるTDP-43の同定、および神経変性疾患の研究への貢献」です。クラリベイト・アナリティクス社のアナリストから、長年にわたる論文分析と、過去のノーベル賞から予想される注目領域で2,000回以上論文が引用され、その分野に大きく貢献したことが評価されたと説明を受けました。栄誉ある賞を賜りましたこと本当に光栄に存じます。

ALSとFTLDにはユビキチン陽性封入体が脊髄や脳に認められていましたが、その構成タンパク質は不明でした。私達は都医学研に統合前の精神医学総合研究所で2003年から研究を始め、2006年にリン酸化TDP-43を同定しました。2年後には、異常リン酸化部位特異抗体を作製し、TDP-43が線維を形成し蓄積していることを見出しました。2013年には、TDP-43線維が正常型TDP-43を異常型に変換するプリオン様性質をもつことを発見しました。また、昨年、愛知医科大学及びMRC分子生物学研究所と共同で、ALS患者脳のTDP-43線維の構造解明に成功しました。これらの成果は、ALS、FTLDの発症や進行機序の解明、診断や治療法の開発につながることが期待されます。

最後に、研究にご理解ご協力下さった患者様とご家族の皆様、剖検や診断に関わられた臨床、神経病理の先生、共同研究者の皆様、研究の機会を頂きました新井哲明先生、池田研二先生に深く感謝申し上げます。

図2. クラリベイト引用栄誉賞(Citation Laureates)2022 受賞
長谷川 成人 プロジェクトリーダー(右)

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