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開催報告

2022年度 都医学研夏のセミナー「基礎・技術コース」(2022年7月21日~7月27日実施)
「神経細胞を可視化して大脳新皮質の層構造の成り立ちを探る」

脳神経回路形成プロジェクトリーダー丸山 千秋

今回は「神経細胞を可視化して大脳新皮質の層構造の成り立ちを探る」というテーマで夏のセミナーを実施いたしました。哺乳類の大脳新皮質は6層構造を持ち、高度の感覚情報処理を可能にしてきました。6層構造は層ごとに特徴的な性質を持ち、興味深いことに各層の細胞群は種間で異なる遺伝子発現様式を示します。そこで本セミナーでは、大脳構造が哺乳類と非哺乳類でどのような違いを示すのか、6層を大きく2つ上層ニューロンと深層ニューロンに分けて、これら2つの層の性質を持つ神経細胞に着目して、進化発生学的な実験を行いました。参加者は小児科医、若い神経分野のポスドク研究者、生物学を勉強中の学部4年生の3名でした。神経細胞への遺伝子導入の技術について概説し、子宮内エレクトロポレーションや卵内エレクトロポレーションする様子を見学してもらいました。続いてマウス(哺乳類)、ニワトリ(鳥類)、スッポン(爬虫類)の脳切片を用いて上層ニューロンと下層ニューロンのマーカーの抗体染色を行いました。マウスでは下層ニューロンのマーカーであるTbr1やCtip2のシグナルは6層の深部の方に検出され、逆に上層のマーカーであるSatb2のシグナルは6層の上層部に検出されました。これに対し、ニワトリ脳では層構造ではなく、ある領域が染まるといった核構造が検出できました。さらにカメでは上層と下層のニューロンマーカーが入り混じったパターンとなり、大脳の構造が種間で大きく異なることがわかりました。参加者も自分の免疫染色のスライドを顕微鏡で撮影し、パワーポイントにデータをまとめ、最終日には結果の発表会と考察を研究室のメンバーと行いました。神経細胞の配置が種間で大きく異なること、哺乳類大脳皮質はユニークな層構造があることについて、脳進化の観点から色々な考察を出し合って議論しました。普段行っている実験や臨床医としての業務とは全く違った観点から基礎研究の実験を行うことができ、参加者からは大変有意義な時間を過ごすことができたとの感想をいただきました。

ニワトリ,マウスの脳切片:抗体染色
実験に取り組む様子
セミナーの様子

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