Jan. 2023 No.048
蛋白質代謝プロジェクトリーダー佐伯 泰
私たちの身体は約37兆個の細胞から形作られており、1つ1つの細胞の中ではそれぞれ1万種類以上のタンパク質が働いています。この10年程の間に、クライオ電子顕微鏡を用いた構造解析が進展し、動きをもつタンパク質のさまざまなスナップショットが得られ、さらには細胞の中のタンパク質複合体をそのまま可視化する手法まで登場しました。私自身、プロテアソームの構造解析に携わり、まさに百聞は一見に如かずという経験をしてきましたが、ATPの加水分解に伴うプロテアソームの構造変化のムービーなどは今でも観るたびに鳥肌ものです。また、蛍光タンパク質の多色化と顕微鏡の高度化によって6色くらいまでは生細胞イメージングが可能になっており、複数のオルガネラの生細胞同時観察のムービーはいつ見ても目が覚める思いです(Valm et al, Nature 2017)。
さて、サイエンスカフェは小学生低学年から80代の方が参加するということで、何から話そうかと本当に悩みました。さらに、細胞や動くタンパク質などをキーワードに調べていくと、よくできたYouTube(中学生の受験対策から海外大学院の講義まで)がたくさん見つかり、これまた、何のオリジナリティも出せないと困りました。最終的には、昔撮った細胞の電顕画像やホタル祭りの携帯動画、モータータンパク質の原著論文ムービーなどをかき集めて何とか形にしました。そしてオチは、細胞の中は小宇宙であるという、どこかで聞いたことのあるフレーズでまとめました。
アンケートでは、「たくさんある細胞内のタンパク質の中から、特徴的なタンパク質を紹介していただいてよかったです。また、複数の蛍光色で細胞内を見た映像が印象的でした。」「学校の掲示板から見つけて参加しました。私は、細胞について興味があったので、お話がわかりやすく、おもしろかったです。家族や学校の友達などにクイズを出してみたいです。」といった御意見が数多く寄せられました。ということですので、私にしては上々だったのかと思います。
せっかくですのでクイズを紹介しますと、
1~3はご存じと思います。4は私も計算して初めて知ったのですが4ギガ個(40億個)となり、たった2つの細胞で世界の人口に匹敵しますし、100個の細胞だと銀河系の星の数になります。確かに小さな宇宙でした。