Jan. 2023 No.048
睡眠プロジェクトリーダー本多 真
本年度第4回都民講座は睡眠障害のひとつの症状である「過眠」を取り上げました。
まず「眠気の評価と”居眠り病”」と題し、本多が講演しました。日本人の睡眠時間は世界的にも短く、特に子どもの夜型化と寝不足は深刻です。そのため居眠りは生活習慣の問題とみなされがちですが、夜間睡眠に問題がなくても強い眠気が生じる「過眠症」という病気があります。睡眠中枢の過活動や覚醒中枢の機能異常が原因と想定されます。ナルコレプシーは過眠症の代表で、日中に耐え難い眠気のため居眠りを繰り返すことから「居眠り病」とも呼ばれます。また大笑いや驚きといった強い感情の動きをきっかけに、膝がカクンと抜ける等の不思議な情動脱力発作を示すのが特徴です。眠気への対処には夜間睡眠の確保や計画的昼寝、規則正しい食事習慣など睡眠衛生を整えることが有効です。さらに過眠症治療では病気と付き合い眠りを自己コントロールする姿勢が重要になります。こうした生活の工夫と薬物療法で生活改善を目指します。
次に東京医科大学中山秀章先生から、「睡眠時無呼吸と眠気」と題してお話いただきました。睡眠時無呼吸症候群は頻度の高い疾患で、肥満の増加に伴い世界的に患者数が増えています。睡眠時無呼吸症候群は生活習慣病との関連が知られ、糖尿病、高血圧症、心筋梗塞・狭心症、高脂血症など様々な疾患のリスクを高めます。治療法は無呼吸の重症度によって異なりますが、基本は減量や生活習慣の見直しです。軽症例では下顎を固定するマウスピースの使用、中等症以上では持続陽圧呼吸(CPAP)による治療が標準となります。これは鼻にマスクを装着し、空気を送り込むことで吸気時にも気道内を陽圧として閉塞を避ける仕組みです。扁桃肥大などが原因の場合は耳鼻科的手術が行われます。最近CPAPでは対応できない中等症以上の患者さんを対象に、舌下神経電気刺激療法という新しい治療法が始まったことも紹介されました。
今回はハイブリッド形式でしたが、日曜日にもかかわらず多くの方にご参加いただきました。病的な眠気に気づいた時は、睡眠学会専門医療機関などにご相談いただいて、早目に診断・治療に結びつけていただければ幸いです。