HOME広報活動刊行物 > July 2013 No.010

研究紹介

空腹状態になると記憶力が上がる仕組みを発見

学習記憶プロジェクト 研究員平野 恭敬

脳の重要な機能である記憶は、複雑な人間社会を生きる上でとても重要です。さらに人の個性、人格、能力は記憶の産物であるといっても過言ではないでしょう。脳の活動は外的な要因(環境)や内的な要因(覚醒度や感情)により大きく変化します。しかし、記憶力が同様に外的、内的要因により変化するのか、変化するとしたらどのように変化するのか、明らかではありませんでした。今回我々は、ショウジョウバエをモデル生物として用い、代表的な内的要因の一つである「空腹」の影響を調べました。すると、通常の状態では使われない分子(CRTC)が活性化することにより、記憶が促進されることを発見しました。さらに、このような記憶の促進は、空腹状態でおきるインスリン低下によることをつきとめました。一方で過度の空腹により飢餓状態に陥ると、食べ物に関する記憶のみが促進されることも見出しています。今回の発見を人に直接応用することは注意が必要で、かつ今後の検証が必要ですが、記憶を促進させる分子(CRTC)を標的とした記憶改善が現実となる日が期待されます。

図

Yukinori Hirano, Tomoko Masuda, Shintaro Naganos, Motomi Matsuno, Kohei Ueno, Tomoyuki Miyashita, Junjiro Horiuchi, Minoru Saitoe.
Fasting Launches CRTC to Facilitate Long-Term Memory Formation in Drosophila Science 339, 443-446(2013) DOI: 10.1126/science.1227170

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