HOME広報活動刊行物 > Jul. 2015 No.018

開催報告

第1回都医学研 都民講座(平成27年4月24日実施)

東京医学総合研究所は都民の皆様向けに年8回ほど講演(都民講座)を行い、当研究所の研究成果の一端や関連する最新情報などを分かりやすくお伝えしています。

睡眠研究の最前線

講師:東京都医学総合研究所 研究員上野 太郎

「大人の発達障害を研究する」
-ASDとADHDの異同と睡眠障害との関わりについて-

講師:昭和大学発達障害医療研究所 所長加藤 進昌

上野 太郎
加藤 進昌

4月24日、昭和大学発達障害医療研究所の加藤進昌所長をお迎えし、当研究所の上野太郎研究員とともに、「睡眠研究の最前線」とい うテーマで都民講座を開催致しました。

はじめに、上野研究員から現代の日本社会が抱える課題である超高齢社会についての話があり、その対策として睡眠医療による生産性向上の方策が説明されました。24時間社会の浸透とともに、日本人の睡眠時間は年々減少し、世界的にも睡眠時間が短くなっていること、不眠による健康への影響や、睡眠障害による日本の経済損失が年間3.5兆円にまで上ることが指摘されました。さらに、基礎研究による睡眠医療への貢献として、日中の過眠症状を示すナルコレプシーの原因解明と、その応用による新しい睡眠障害治療薬の開発の話がされました。その後、最新の睡眠研究として、ショウジョウバエを用いた睡眠の基礎研究や、ゲノム解析・編集の技術革新により、医療への橋渡しを目指した睡眠の基礎研究の内容が紹介されました。

次に、「大人の発達障害を研究する」というテーマで、昭和大学発達障害医療研究所の加藤進昌所長からお話がありました。まず、加藤先生が医師になられたばかりのころの睡眠研究について説明があり、一晩中脳波のデータが紙に印刷されて出てくる中で、睡眠研究は徹夜で 行うものだったとお話がありました。その後、大人の発達障害として広汎性発達障害(PDD)や学習障害(LD)、睡眠障害としてナルコレプシーなどの非器質性睡眠障害、睡眠・覚醒スケジュール障害などについて、わかりやすいご説明がありました。

また、注意欠陥多動性障害(ADHD)の病態生理として1900年代に行動障害を持つ児童に対して中枢刺激薬で治療を行ったところ半数に目覚ましい改善が見られ、その後、動物実験により原因の追究を行ったというご説明や、中枢刺激薬の有効性が30年近い臨床使用の実績や100を超える臨床試験成績によって示されていること、日本ではリタリンが使用できず、コンサータが発売されたことなどのご説明がありました。

加藤先生からは、発達障害の症例が目に浮かぶかのように、大変詳しくお示しいただき、参加者の理解を深めていただきました。講演後のアンケートでは、「内容がわかりやすかった」「睡眠研究について知ることができよかった」という声が多数寄せられ、非常に有意義な講演会となりました。

認知症・高次脳機能研究分野 上野 太郎

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