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開催報告

第6回都民講座(平成29年12月14日開催)
「今日のスギ花粉症に対する最新治療と研究」

花粉症プロジェクトリーダー廣井 隆親

第6回都民講座

今回の都民講座は、年々増加するスギ花粉症における現状と外科処置を含んだ治療法に関して著明な2名の先生方をお迎えして開催しました。初めに日本医科大学・耳鼻咽喉科・大久保公裕教授が、年々増加するスギ花粉症は、最新調査報告より現在2人に1人が罹患していることにより生活の質(QOL)が低下するだけでなく、一人当たりの生産性が他の疾患(癌や精神疾患など)と比較して大きく低下しており、国の 社会問題として捉える必要性があることを解説されました。一方で、花粉症治療の3本柱(薬物療法、免疫療法、外科療法)のうち、薬物療法と免疫療法について解説されました。特に舌下免疫療法の特徴をこれまでの皮下免疫療法と比較対比して長所を重点的に解説されました。次に、大分大学医学部・耳鼻咽喉科・児玉悟講師には、花粉症における外科療法についてご講演いただきました。手術の方法として、①鼻粘膜 の縮小と変調を目的とした手術、②鼻閉(鼻づまり)の改善を目的とした鼻腔整復術、③鼻漏(鼻みず)の改善を目的とした手術があります。①のレーザー手術は局所麻酔での簡便な外来手術で、入院は不要ですが、必ずしも効果が長続きするものではありません。したがって現在では手術効果の持続が期待できる②と③を組み合わせた入院手術が行なわれることが多くなっています。この②と③の手術のうち、鼻中隔矯正術、 下鼻甲介骨切除術、後鼻神経切断術といった全身麻酔下での手術についてビデオを見ながら解説されました。最後に私から、舌下免疫療法の作用機序の解明を含めた治療効果の予測を確立する研究発表を行いました。研究の目的は、治療期間が3年以上と長い舌下免疫療法において効果がない患者が3〜4割程度存在することから、効果の有無の原因を探索するものです。研究の結果、26種類ある味の苦味を感じる受容体の組み合わせが免疫学的個性化に重要であることがわかりました。この研究成果から患者に合わせたオーダーメイド医療の確立を目指しています。

講演後は、ご来場の皆さまから多数の質問やアンケートでも「アレルギー性鼻炎について良く理解ができた」とのご意見を頂戴し、充実したものとなりました。

演者の写真

左から廣井研究員、大久保先生、児玉先生

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