HOME広報活動刊行物 > April 2018 No.029

開催報告

第7回都医学研都民講座(平成30年1月19日開催)
「スポーツ脳科学への招待」

脳機能再建プロジェクトリーダー西村 幸男

西村研究員と彼末先生

都民講座といえば、病気や健康について取り上げてきましたが、今回は趣向を変えて、病気とは正反対の‘超’健康のスポーツ選手にスポットを当て「スポーツ脳科学への招待」と題して、都民講座を開催しました。今回は早稲田大の彼末一之先生と当研究所の西村が講演しました。彼末先生はスポーツ選手の想像力について講演され、「できないことは想像することさえできない」と説き、西村は「スポーツに必要なのは喜怒哀楽だ」と説き、心がスポーツパフォーマンスを作り出すメカニズムについて脳科学的な側面から講演がなされました。その講演内容を踏まえて、今回の平昌冬季五輪について、雑感を書きます。

平昌五輪は、これまでになく興奮しましたね。日本特有のチームワークと粘り強さで獲得した女子スピードスケートの金メダル、男子フィギュアの魂の入った美しさは圧巻でした。

かつて日本人は五輪でメダルを獲ることが目標でしたが、 今回の日本人選手の目標は金メダルでした。

競技中の日本人選手は無表情でしたが迷いがなく、力強い。彼らはどれだけの時間、金メダル獲得までの戦いを想像し、想像の中で何度、勝負に勝った自分を想像してきただろうか。彼らはどれだけの時間、金メダルを自分の首にかけ、表彰台の上に立っている自分を想像したことだろうか。その道のりを鮮明に想像し、それを実行することこそが、偉業を達成させたのでしょう。彼らは自分が、なぜ五輪の舞台にいられるのか、それが偶然や幸運ではないことを知っていることでしょう。

選手は謙虚でした。対戦相手がどれだけ苦しい時間を過ごして同じ舞台に立っているかを知っているのでしょう。自分も同じように苦しい時間を過ごしてきたからこそ、対戦相手に敬意を表すことができるのです。

選手の言葉は感謝ばかりでした。試合後のインタビューは、支えてくれたコーチ・チームメイト・家族への感謝の言葉ばかりでした。苦しい時、うれしい時、悔しい時もそれを共有し、心身ともに支えられてきたのでしょう。

その五輪を観た我々観客は、単なる傍観者ではなく、共感者となり、うれし泣き・悲し泣き。どうして、こんなに心に染 み入るのでしょうか。

このように、スポーツとは単に身体を動かすだけではありません。同様に、五輪はそもそも競技スポーツで一番を決めるものではありません。五輪の理念が述べられているオリンピック憲章によると「オリンピズムは肉体と意志と精神のすべての資質を高め、バランスよく結合させる生き方の哲学である。オリンピズムはスポーツを文化、教育と融合させ、生き方の創造を探求するものである。その生き方は努力する喜び、 良い模範であることの教育的価値、 社会的な責任、さらに普遍的で根本的な倫理規範の尊重を基盤とする」とあります。

2020年、東京で五輪が開催されます。当研究所では、東京五輪を脳科学・医学的立場から盛り上げることに貢献できればと考えております。

会場の写真
ページの先頭へ