東京都医学総合研究所のTopics(研究成果や受賞等)

HOMETopics 2017年

TOPICS 2017

動物の意欲を司る2種類の線条体神経

2017年2月6日

米国科学誌 「Journal of Neuroscience」 に睡眠プロジェクト 夏堀晃世主席研究員らが 「動物の意欲を司る2種類の線条体神経の活動と役割分担について解明」 について発表しました。

動物の意欲を司る2種類の線条体神経の活動と役割分担について解明

Early releaseとしてすでに2月6日よりHP上に掲載。プリント版は3月上旬に掲載予定。
 http://www.jneurosci.org/content/early/2017/02/06/JNEUROSCI.3377-16.2017

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1.研究の背景

線条体に存在するドパミン受容体1型と2型陽性神経 (以下D1-MSNとD2-MSN)は「直接路」と「間接路」を形成し、動物の運動や意欲行動(やる気)に対して「アクセル」と「ブレーキ」として逆向きの働きをすると考えられてきました。しかしこれまで、動物の運動や意欲行動に対してD1-MSNとD2-MSNが逆向きの活動をしていることを、生きた動物で実際に観察した報告はありませんでした。

2.研究の概要

我々は、マウスがレバーを押すと餌がもらえるオペラント課題(図1)を用い、マウスが意欲をもってレバー押しをしている最中の腹外側線条体のD1-MSNとD2-MSNの活動を測定しました。D1-MSNあるいはD2-MSN選択的にカルシウム蛍光プローブを発現する遺伝子改変マウスを用い、光ファイバを用いてこれらの神経細胞のカルシウム活動を計測しました。その結果、マウスの意欲行動中のD1-MSNとD2-MSNのカルシウム活動は逆向きではなく、全く同じパターンを示すことが分かりました(図2)。

次に、オペラント課題中に腹外側線条体のD1-MSNとD2-MSNの活動をそれぞれ光で抑制し、マウスの意欲行動の変化を観察しました。D1-MSNあるいはD2-MSN選択的に光駆動性抑制性チャネル(ArchT) を発現させた遺伝子改変マウスを用い、マウスにレバーを提示するタイミング(マウスがレバー押しを開始する前、図2:赤矢印)にD1-MSNあるいはD2-MSNの活動を光抑制すると、どちらもマウスがレバー押しの意欲を失くしました。一方、マウスがレバーを押し始めた後(図2:青矢印)にD1-MSN活動を光抑制すると、マウスは意欲を失くしてレバーを押さなくなりましたが、D2-MSN活動を光抑制してもマウスの意欲は変化しませんでした。このことから、腹外側線条体のD1-MSNとD2-MSN活動はどちらもマウスの意欲行動開始を担っていること、またD1-MSNの活動はマウスの意欲行動を持続させるのにも必要であることが分かりました。この結果から我々は、これらの腹側線条体のD1-MSNとD2-MSNの役割分担に一致した神経回路モデルを新たに提案しました(図3)。

本研究は、慶応義塾大学医学部 精神・神経科学教室の田中謙二准教授、三村將教授、北海道大学大学院医学研究科の渡辺雅彦教授らとの共同研究によるものです。

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